https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62805320R20C22A7TB1000
森ビルはカーペットの6割をいったんチップにして再生する。三菱地所はごみの肥料化などを通じ、東京・丸の内の廃棄物の再利用率を2030年までに100%に高める。入居に際してビル側に脱炭素や環境配慮を求めるテナント企業が増えていることに対応する。
森ビルは床材大手の東リとカーペットの再生を進めている。これまでは繊維でできた「パイル層」と塩ビ樹脂製の「バッキング層」に分け、後者を再利用していた。今回は全てをチップにし、それを素材に再びカーペットを作って自社ビルで利用する。再生品も新品と価格は変わらない。
同社が六本木などで運営するオフィスビルの専用部で廃棄されるカーペット面積は年8万4000平方メートルほど。そのうち東リ製は6割強を占める。まずは東リ製を対象に再生を進め、他社製に広げるか検討していく。
今回のカーペット再生により、森ビルは21年度の産業廃棄物の排出量を約6%減らせる見込みだ。以前からオフィスビルの養生材の再利用などでプラスチック排出量を1割削減する取り組みを行ってきたが、環境対策を上積みして入居を検討する企業にアピールする。
三菱地所は21年からオフィス家具の再利用事業を本格的に始めた。入居企業の退去時に家具を下取りし、クリーニングして新品より割安な価格で販売。現在は月に約400点を販売し、売上高は想定の倍以上で推移する。22年には引き取った中古家具を利用したセットアップオフィスの提案にも乗り出した。
同社は街単位でも環境配慮を進める。4月から「サーキュラーシティ丸の内」と題し、東京・丸の内地区の飲食店で持ち帰り容器の無料配布を始め、ごみの肥料化などにも着手した。丸の内の24棟のビルが出す産業廃棄物は約1万6000トンで、そのうち生ごみが約3割と最も多い。19年度の廃棄物の再利用率は64%にとどまっているが、30年までに100%に高める。
住友不動産はダイキン工業と6月から、運営ビルで回収した空調冷媒の再利用を始めた。冷媒を環境負荷のない物質に無害化して破棄することが多いなか、本格的な再利用は不動産大手で初めてとなる。230棟超のオフィスビルの約8割を対象とする見通しで、空調機器の交換やビルの改修などのタイミングで導入していく。
オフィスで処分される機材やごみは多い。従来は立地の良い大型ビルであれば賃料が高くても選ばれていたが、近年は企業側が環境負荷の小ささを入居の選定条件として重視するようになってきた。再生可能エネルギー由来の電力や耐震性など、企業が求めるニーズは多様化しつつある。

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