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渋谷再開発、あっと驚くランドマークに 東京建物 野村均社長

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD127O00S2A710C2000000

 

本拠地である東京駅前・八重洲で巨大な再開発案件を急ピッチで立ち上げつつ、新たに渋谷の再開発に着手した。「あっ、と驚くランドマークづくりに挑戦する」と野村均社長。東京の各エリアで地域の特性に応じた開発を進め、それを連携させていく。「やがてそれが全体の力となり、世界での都市間競争を勝ち抜く力になる」と力を込めた。

分野横断、新しい価値を創造

創業以来、一貫して東京・八重洲エリアに本社を置き、周辺地域を束ねながら再開発を進めてきた東京建物。その一方で 2006 年には複合再開発施設オリナス(東京・墨田)を核とした錦糸町の再開発プロジェクトを仕上げ、12年には中野の警察大学校などの跡地に中野セントラルパーク(東京・中野)を開発するなど難しい開発案件に挑戦してきた。

「東京・八重洲は東京のヘソ。ここでの基盤があるからこそ挑戦が可能だ。錦糸町にしても中野にしても『あそこにオフィス?』と驚かれるエリアだったが、錦糸町は職・住・遊を融合したプロジェクトで評価を獲得、中野は緑と一体となった都市空間づくりが支持を得て大手企業の誘致を成功させた。オフィスに向かないエリアでも工夫次第で地域の力を引き出せる。これこそデベロッパーの仕事だ」

「当社の強みは社員一人一人の人間力。足場を置く八重洲、日本橋、京橋は上場企業100超が本社を構えるエリアだが、小さな区画も多い。個人で商店を営んだり事業を手掛けたりしているケースも多く、再開発には粘り強い折衝が必要だ。その過程で磨かれた力が、東京の他の様々なエリアでの開発でも役に立ってきた。『東京建物との仕事は気持ちがいい』と言われるようになり、成果は着実に現れつつある」

次の挑戦の場は渋谷。29年度の完成を目指し渋谷エリアで最大規模の再開発を進める。渋谷は米グーグルの日本法人がオフィスを構えるなどIT(情報技術)関連企業の集積度も高い。様々なチャレンジを受け入れる素地がある。

「あっ、と驚くランドマークが立ち上がるはずだ。渋谷は元来、インバウンド(訪日外国人)も多く国際的で創造性のある街。渋谷らしい個性的な再開発『渋谷二丁目プロジェクト』をJR渋谷駅東側の3街区で進める。合計の延べ床面積は約32万2200平方㍍。渋谷エリアではかつてない規模の巨大な再開発となる」

「最も高いビルは地下4階地上41階建てで高さは約208㍍。オフィスのほかビジネスや観光で訪れる外国人を想定した高級ホテルの入居を計画している。バスターミナルも整備、高さ175㍍の住居棟では多言語対応の案内サービスも開発する」

「ユニークなのは新しい価値を創造できる分野横断型の人材を育成する拠点を整備することだ。いわゆる『STEAM』と呼ばれるタイプの人材の育成拠点で数学のほか科学、技術、工学など幅広い分野に精通し、これまでにない価値を創造してくれる人材をここで育て、コミュニティー形成をサポートしていく」

東京全体で再開発が進み、それぞれが連携することで東京の都市力が上がっていく。東京の国際的な地位があがればその中心である八重洲、日本橋、京橋に足場を置く東京建物が成長するエネルギーとなる。

「東京建物はかつてない規模の再開発プロジェクト案件を抱える。25年に『八重洲プロジェクト』が完成、その後に『渋谷二丁目プロジェクト』『呉服橋プロジェクト』を立ち上げるが、30年には東京建物が抱えるオフィスや商業施設など賃貸収益を稼ぐ床面積はこれまでの1・6倍の約80万平方㍍にまで増える」

「収益が安定すればよりボラティリティー(変動率)の高いプロジェクトに挑戦できる。ユニークな街づくりにも取り組むことが可能だ。デベロッパーのこうした挑戦が連携、相乗効果を生みながら東京の未来を変えていくことになる」

編集後記 三つのプロジェクト、全体で共鳴

キンキンに冷えたビール、缶酎ハイがびっしり――。東京建物本社の3階のコミュニティールームに置かれた冷蔵庫だ。利用は2人以上というのがルール、1人で飲むのは禁止。もちろん無料だ。

新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが増大し、オフィス不要論もあるが「需要は絶対になくならない」と野村社長。「コミュニケーションを活発化して新しいものを生み出していく。オフィスがなければそれができない」という。冷蔵庫のアルコール飲料は「オフィスは楽しい。万全な感染防止対策を大前提にみんな、どんどん交流してくれよ」という野村社長からのエールだ。

もう1つ、オフィス需要がなくならない根拠としてあげるのが、日本のワークスペースの狭さ。「欧米やアジアと比較すると日本はまだまだ狭いのではないか」。アフターコロナを見据え、オフィスを広げようという企業も多く、再開発は着々と進めていく。

「八重洲プロジェクト」をはじめとする3つの再開発プロジェクトは、どれをとっても東京建物の歴史のなかでは最大規模。今年の10月1日で126周年を迎える老舗デベロッパーの東京建物だが、一つ一つ、立ち上がるごとにデベロッパーとしてのステージを押し上げていくことは間違いない。それがまた東京で並行して進む巨大プロジェクトと共鳴しながら、新しい東京の未来をつくっていくことになる。