https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62705380Y2A710C2NN1000/
――難関校として知られる開成高校の生徒はこれまで、国内有名大への進学が定石でした。
「一部の若い人は『能力が高くても自分の人生はいまの日本では描けない』と考え始めているのだろう。背景にあるのが社会の閉塞感だ。国内総生産(GDP)は横ばいで、成長していない。親世代は逃げ切れるかもしれないが、自分の世代はそうはいかないと予想しているはずだ」
「ジャパン・アズ・ナンバーワンともてはやされた時代は、日本に居場所を見いだせない若者が海外に出た。今は一旗あげたいという思いを抱く若者が海外を目指す」
――校長在任中に海外大学への進学者が増えました。
「進路指導では東大に行けとも海外に行けとも言っていない。自分の人生だから自分で考えてもらった」
「もともとは海外大学での勤務経験がある私に、生徒から『海外に進学したい』と相談があった。私が推薦状を書き、生徒と一緒に英語の学校概要も作った。その後、『国際交流留学生委員会』を学内につくり、複数の教師が組織的にサポートする体制を整えた」
――国の留学支援は乏しいのが実情です。
「現代版の遣唐使として留学生を送り出してはどうか。毎年1000人に給付型の奨学金を与えて海外に進学させる。卒業後、日本に帰国して活躍してくれてもよいし、海外から日本を支える人材になってもよい」
「国が留学を後押しすれば一番変わるのは日本の大学だ。海外との競争の矢面に立てば、大学教育も改革が進むだろう」
(聞き手はマクロ経済エディター 松尾洋平)

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