日銀・市場の攻防どうみる ケイガン・キャピタルの中川成久CIO「金融緩和修正 避けられず」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62671430V10C22A7ENG000/

 

日銀と市場の攻防はどうなるのか。日本国債の売り持ちを構築している英ヘッジファンド、ケイガン・キャピタルの中川成久・最高投資責任者(CIO)と、米運用大手PGIMフィクスト・インカム共同CIOのグレゴリー・ピータース氏に聞いた。

 

――日本国債の売りポジションを持つ理由は。

「消費者物価指数の上昇率が(目標の)2%に達し、消費者の『体感インフレ』も上昇している。この状況が続けば、やがて日銀は金融緩和の修正をせざるを得ない。そうなった場合に金利上昇で利益が得られるようにショートポジションをつくっている」

「日銀の生活意識に関するアンケート調査では、消費者が感じる1年前と比較した物価の変化は6月に中央値で5.0%と、前年同月の2.0%から大きく上昇した。消費者の購買力を低下させ、経済の下押し圧力になる。日銀は過去にこれが景気に悪影響を与えると認めている」

――日銀は低金利を保つ姿勢を崩しません。

「世界の中央銀行がインフレを鎮めるため金融引き締めに動くなか、日銀だけは長期金利の上昇を抑制するために決まった利回りで無制限に国債を買い入れる指し値オペを通じ、大量の国債を購入している。海外からみれば金融緩和を強化しているようにもみえる」

「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を維持する日銀のコストは上昇し、政策は限界に近いとみる。金利に上昇(債券価格は下落)圧力がかかるなか、日銀は海外の投機筋から国債をかなり割高な水準で買い入れている。この状況になっても続けるべきか丁寧な議論が必要だ」

――実質賃金が下がっていることも日銀が金融緩和を続ける理由です。

「説得力に欠ける。米国でも高インフレで実質賃金はマイナスだ。一方で名目賃金は日米とも上昇している。足元では実質と名目の両方をみて評価すべきだ。日本の労働市場の硬直性にも問題がある。産業構造が変わるなかで労働力が固定されれば労働資源が適切に配分されず、賃金上昇を伴う成長が見込めない」