モモやメロン、じわっと高く 5年で卸値2~3割高 海外需要衰えず 農家、輸出シフト

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冬によく食べるリンゴやイチゴも1~3割高い。品質の高さが評価され、アジアで消費が定着したのが一因だ。生産者は国内市場の縮小で、高く売れる輸出向けに販路を広げている。

 

輸出が伸びると国内での出回りが抑えられ、国内の卸値も上がる要因となる。円安でこの傾向が加速する可能性がある。果物は店頭価格も高止まりする。卸値の上昇は消費を冷やし需要がさらに減る悪循環につながりかねない。

青果物情報センター(東京・大田)がまとめた東京市場のモモの卸値は7月上旬に1キログラムあたり822円。5年前の同期と比べて34%高い。高級品のアールスメロンは同1001円と24%上がった。

農林水産物・食品の輸出額は2021年に1兆円を超えた。果物で最も輸出量が多いリンゴが前年比4割、イチゴは同5割、モモも2割それぞれ増えた。食味や外観がいい日本産の果物はアジアの中間層を中心に、浸透しつつある。

5月下旬。早朝の東京・大田の大田市場では、青果仲卸の店先に豪華な化粧箱に入った大粒のシャインマスカットや巨峰、モモなどがパレットに積まれ、海外に輸送するための荷造りが進む。

1箱に3キロ程度入ったシャインマスカットの売値は2万円を超えるという。高くても1房5000円程度の日本のスーパーとの差は歴然だ。仲卸の担当者は「新型コロナウイルス禍以降は輸送費などが上がったが引き合いは衰えない」と話す。

高く売れる果実は農家の手取りの増加につながる。「等級が高いものを作る生産者は香港やシンガポールを狙って出したいという意識を持っている」(東京・大田の青果卸の輸出部門の担当者)。国内で出回りが抑えられる要因になる。

東京市場の入荷数量(7月上旬)は、5年間でモモやアールスメロンが3割減った。円安が進行するなか、輸出向けの商材はさらに引き合いが増える可能性がある。

果樹作りの担い手も減少が続く。農林業センサス(20年)によると、全国で果樹を栽培する農家や農業法人などは15年比で2割減った。

卸値の上昇は国内に影を落とす。都内の食品スーパーの店頭価格は大玉のモモが2個で1000円を超え、頻繁に買うには負担だ。あらゆる食品や日用品が値上がりするなか、高値の果物は消費者から縁遠くなりつつある。

(杉山麻衣子)