なぜ、進まぬ貯蓄から投資? 眠る現預金1000兆円

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB081JG0Y2A700C2000000

 

つい数年前までは1500兆円といわれていました。その際に決まり文句のように言われるのが「貯蓄から投資へ」です。個人マネーが現預金に滞留する現状を打開し、資産形成を後押しするため、政府は資産所得倍増プランの策定に着手します。投資の流れは日本に根付くのでしょうか。

 

貯蓄はどれくらいありますか?

金融資産の状況は日銀が発表している資金循環統計で把握できます。2021年度末の個人(家計部門)の金融資産は前年度末比2.4%増の2005兆円でした。このうち、現金・預金は1088兆円で54.3%を占めます。米国の1割や欧州の3割を大きく上回ります。

次に多かったのが保険・年金・定型保証の540兆円で、円安の進行で外貨建て保険の評価が膨らみました。株式の保有残高は前年同期に比べて0.6%減の204兆円、投資信託は10.4%増の91兆円でした。

資産所得倍増プランとは?

岸田文雄首相は5月に「貯蓄から投資へ」を促すための「資産所得倍増プラン」を掲げました。参院選で自民党が勝利したことで「岸田首相の主張する資産所得倍増プランが進めやすくなった」(大手証券幹部)との見方が出ています。

資産所得倍増プランは年内にもまとめる予定です。5月31日に示した政府の新しい資本主義実現会議が示した実行計画案では「個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせるべく少額投資非課税制度(NISA)の抜本的な改革を検討する」と記載しました。時限措置であるNISAの恒久化など非課税措置の拡充が目玉になるとみられます。

「貯蓄から投資へ」は歴代の政権にとっても重要な課題の一つでした。公的な年金が先細り、長寿化が進むと、老後資金をどうするかという問題が出てきます。3年前の参議院選挙の直前には「老後2000万円」というキーワードが話題となりました。高齢世帯の家計の収支を調べると月5万円ほどの赤字が発生し、人生100年時代の老後には2000万円ほど必要だというものです。

インフレが進めば現金の価値は目減りしてしまいます。「貯蓄から投資へ」は老後資金の確保だけでなく、インフレ対策の面でも有効な手段となります。