点検・米景気(3)いびつな住宅市場 販売不振でも価格は高止まり

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62627990U2A710C2FF8000

 

米国で主流の中古住宅の販売件数は、5月まで4カ月連続で前月を下回り、新型コロナ禍で急減した2020年6月以来ほぼ2年ぶりの低さになった。住宅ローンの申請も一時22年ぶりの低水準に沈んだ。

大きな要因がインフレ退治を急ぐFRBの大幅利上げだ。30年固定の住宅ローン金利は22年上期(1~6月)に約2.6%上昇。半年間の上げ幅では1980年下期以来の大きさになった。米証券ジェフリーズのアネタ・マルコウスカ氏は「FRBは(経済全体の)需要を冷やそうとしており、金利に最も敏感な住宅分野では明らかに成功している」と指摘する。

一方、住宅市場にはなお過熱感も残る。5月の中古物件の販売価格(中央値)は40万7600ドル(約5550万円)で、1年前から15%上がり、過去最高を更新した。人手不足などで住宅建設が滞ったため在庫が極めて少ない状態が続き、需要が減ってもなお高い価格で買おうとする顧客が多い様子もうかがえる。

全米不動産協会(NAR)が算出する住宅の取得しやすさを示す指数は22年に入って急低下。5月は08年のリーマン・ショック前の住宅バブル期だった06年7月以来、ほぼ16年ぶりの低い水準に悪化。所得に対して物件価格の高さや住宅ローン金利の負担が重くなっている事実を示す。とりわけ貯蓄や所得が相対的に少ない若年層は、持ち家の取得が難しくなったと不満を募らせている。

持ち家を諦めた人が賃貸物件に流れることで家賃が上昇し、個人の消費余力をそいでいる側面もある。

住宅市場変調の影響は雇用にも及び始めた。

「解雇は必要がなければしないと言ってきたが、そうすべき時がきた」。インターネット不動産仲介レッドフィンのグレン・ケルマン最高経営責任者(CEO)は6月半ばに公開した社員向けメモにこう記した。同社はグループ全体の人員の6%にあたる約470人を削減する。「住宅販売は数カ月どころか、数年単位で減る可能性がある」と「冬の時代」の到来に身構える。