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新型コロナウイルス禍から回復し、資源高の価格転嫁に成功した企業などで最高益が相次ぎ、社員に手厚く還元する動きが広がった。ただ、物価高のなか消費の底上げにはボーナスのみならず、ベースアップを含む賃上げが課題になる。
上場企業を中心に21年と比較可能な443社を対象に集計した。製造業は11.79%増で、18業種のうち石油を除く17業種で上回った。鉄鋼は1.8倍に増え、電機や医薬品、精密機械の3業種の平均支給額は100万円台に乗せた。非製造業は6.67%増だった。
東証の全上場企業のうち、22年3月期決算で前の期までと比較可能な約2300社の3割で純利益が最高益を更新した。業績連動制を採用する企業の支給額は前年比19.86%増え、全体平均の伸び率を大きく上回った。
原料高などを価格にいち早く転嫁できた鉄鋼などで高い伸びが目立つ。日本製鉄は2.3倍の118万5000円、JFEスチール(99万円)も1.9倍だった。
旺盛な受注が続く半導体関連企業が支給額上位に並んだ。首位は半導体製造装置のディスコで、366万1973円(30.03%増)。同業の東京エレクトロン(289万6223円)は支給額2位で続いた。
コロナ禍で打撃を受けた非製造業でも支給の改善傾向が鮮明だ。不動産・住宅は15.11%増と業種別でも全体で4番目の伸び率となり、積水ハウスは13.66%増の163万8000円だった。全日本空輸は2年ぶりの夏ボーナス支給となる。
原材料高や円安が打撃の食品は0.46%増にとどまる。明治は0.73%減。長引くコロナが響き、原材料高などで22年3月期の業績が振るわない。23年3月期も先行き不透明とし、支給額を小幅に下げた。
原料高などが響き、焼津水産化学工業は0.91%増にとどまった。100円ショップ大手セリアは20%近く減らした。原料高などが響きやすい中小企業(従業員300人未満)の伸び率は4.82%増にとどまる。
経済協力開発機構(OECD)によると、21年の年間平均賃金は34カ国中24位にある。足元で日本の物価上昇率は2%を超え、大幅な利上げで世界経済が冷え込むとの不安も強くなる。日本の経営者はボーナスは増やしても固定費増につながる賃上げに消極的だ。
第一生命経済研究所の熊野英生氏は22年度の家計負担(2人以上世帯)は前年度より約10万円増えると試算する。夏ボーナス約8万5000円増は額面では家計の負担増の大部分を補えるようにも見えるが、「足元での負担増はバブル崩壊後ほとんどなかったような現象で、額面以上の負担感がある。(物価上昇の影響を除いた)実質賃金のマイナス傾向は続く」という。消費の底上げ効果は限られるとみる。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「ボーナスだけではなく全年収の70%以上を占める基本給上昇が重要だ」と話す。

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