https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB139740T10C22A7000000
本来なら不動産を割安で購入し高い運用利回りを目指すべきなのに、REITに親会社の持つ不動産を高値で買わせるために鑑定会社に高い価格を提示するよう働きかけたという。REIT運用会社への業務停止命令は2007年のダヴィンチ・セレクト以来、15年ぶり。
エスコンアセットは、中部電傘下の不動産会社日本エスコンの子会社。業務停止命令で、REITによる新規の不動産購入など一部の業務ができなくなる。金融庁は中部電、日本エスコンにも事実関係の報告を求める「報告徴求命令」を出し、管理体制の見直しを促す。
エスコンアセットが運用するのは上場REITのエスコンジャパンリート投資法人。エスコンアセットは親会社の日本エスコンがREITに不動産を売却する際、親会社の希望価格を鑑定会社に伝え、より高い価格になるよう働きかけていたという。
不動産の取得価格が高くなるとREITの投資家の運用利回りが低くなる。金融庁はエスコンアセットがREITに忠実な運用をしておらず、金融商品取引法の違反に該当する行為だと判断したようだ。
日本エスコンは18年に中部電と資本業務提携を結び、21年に中部電の連結子会社になった。中部電は不動産事業を強化する狙いがあり、日本エスコンに取締役を派遣している。金融庁は中部電に対し、子会社の日本エスコンのガバナンス(企業統治)改善にどうかかわっていくのか報告を求める方針だ。
日本のREITの多くは不動産会社やファンドが設立し、保有する不動産の主要な売却先にしている。REIT側にとって規模を安定的に拡大しやすい利点がある一方、親会社である不動産会社の利益が優先され、REITに不動産を高値で売りつけたり、立地などで劣る不動産を押しつけられたりするリスクがある。
今回は、投資家にとって不利益になりかねないREITの構造的な問題点が浮き彫りになった事例といえる。

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