韓国、0.5%の「倍速利上げ」 インフレ抑制へ年2.25%に 家計負債急増、消費に影

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同行初となる通常の2倍の利上げ幅で、アジア通貨危機以来となる23年ぶりの物価高騰を抑え込む狙い。ただ、韓国では不動産高騰を背景に家計負債が急増しており、利上げによる消費低迷懸念が韓銀の金融政策の足かせとなっている。

政策金利を0.50%引き上げて年2.25%とした。0.50%の利上げは1999年に始まった現行通貨政策の枠組みで初めて。資源や原材料価格の上昇を受けて韓国の消費者物価指数(CPI)は6月に前年同月比6.0%上昇しており、インフレ抑制のために「倍速利上げ」に踏み切った。

韓銀の李昌●(かねへんに庸)(イ・チャンヨン)総裁は同日の記者会見で「物価上昇の速度は高まり、品目も広範囲に及ぶ。物価高への先制的な対応が必要」と話した。

米連邦準備理事会(FRB)が0.75%の利上げを決めるなど世界的な金利上昇局面の今、韓銀も追従する形で利上げを進める。李総裁は年末の政策金利を2.75%~3.0%とする市場予想について「予想は合理的」との認識を示し、年内残り3回の通貨委員会での継続利上げを示唆した。

ただ、国内の家計負債の膨張が止まらない韓国では米国のように大胆な利上げを続けられない事情もある。ソウル市のマンション平均価格は文在寅(ムン・ジェイン)前政権の5年間で2倍に上昇した。

購入を先延ばしにすればさらに値上がりするとの消費者心理も働いて、銀行借り入れを増やしてマイホームの購入を急いだ世帯が多い。

結果的に家計負債総額は5年間で37%増えて1859兆ウォン(約195兆円)となった。さらに問題になるのは、これら家計負債の83%に変動金利が適用されていることだ。韓銀によると5月の平均貸出金利は4.14%と、前年同月から1.25ポイント上昇した。

野村金融投資の朴正祐(パク・ジョンウ)エコノミストは「韓銀の0.50%利上げによって家計の利子負担は6兆ウォン増える」と試算。今後も政策金利が上昇すれば一般家庭の可処分所得の減少を招き、景気低迷は一層深刻になるとの見方を示す。

漢陽大学の河駿●(つちへんに炯のつくり)(ハ・ジュンギョン)教授は「金利上昇によって特に自営業者や低所得層の負担が大きくなる」と懸念を示す。韓銀の李総裁は「変動金利から固定金利への転換支援など状況改善に努力する」として救済策を模索する。

急速な利上げは住宅ローンを組む家庭の利子負担の増加で消費意欲の低下を招く。その一方で、利上げペースを落とせばウォン安が進んで輸入物価が高騰し市民の生活は苦しくなる。家計負債の膨張によって韓銀の通貨政策は大きなジレンマを抱えることになった。