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コマニーがMBO 「報いは株主より社員に」塚本会長 MBO 狙いを聞く

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC126OB0S2A710C2000000

 

創業家出身で2代目の社長だった塚本幹雄会長は、「株主よりも社員に報いる会社にしたい」とMBOを決めた。今後の戦略などを聞いた。

 

――東証スタンダード市場での上場が廃止になります。

「新型コロナウイルスの感染が拡大した2年前くらいからMBOを考え始めた。コロナで働き方が変わればオフィス空間も変わり、ただ間仕切りを作るだけでなく空間全体を意識した提案が必要だ。変革しないといけないが、変革、変革と言っているだけでは変わらない。過去の延長線ではない挑戦をする姿勢を示すため、MBOを決めた」

――上場のメリットはなくなりましたか。

「地方の企業でもあり、上場は知名度や信用の向上といったメリットがあった。しかし、情報開示など難しい要請が出てきた。監査法人への報酬など、上場維持のコストが年間数千万円かかる。デメリットがメリットを上回っている」

「コマニーは創業時から社員が一番で、社員の士気が上がれば顧客や取引先、そして株主に報いることができると考えてきた。上場して株主に配慮すると、四半期決算を意識して短期で利益を出さないといけないし、株主還元も必要となる。上場廃止後は株主ではなく社員に報いる。(年間)600万円前後の平均給与を700万円にするのが目標だ」

――MBOを機に会社をどう変えますか。

「短期、部分最適の発想で利益を追うのを改め、中長期、全体最適を考える会社にしたい。京セラ創業者の稲盛和夫さんが始めた(組織を小単位に分けて採算管理する)アメーバ経営を続けてきた。結果的に、設備投資をせずに減価償却費を抑えて利益を出そうという責任者が出てきた。彼らは一生懸命やった結果だから責められない」

「会社全体として設備投資が遅れ、生産効率が悪くなっていた。設備や情報システムへの投資を増やして、例えば3交代ではなく2交代で生産できるような仕組みをつくりたい」

――22年3月期を初年度とする中期経営計画策定時点で、損益分岐点比率が90%以上と高水準です。

「社員への報いは厚くしたいので、損益分岐点比率を下げるには売り上げを増やすしかない。価値が高い商品を開発し、売価を上げていく経営を進める」

「コロナ禍で開発した1~2人用のワークブース『リモートキャビン』が好調に売れている。今までだったら2年はかかっていた開発期間を半年にして、発売後に顧客の声を受けて改良を加えた。いわばアジャイル開発だ。開発に時間をかけていたら同じような商品を他社が出す。失敗してもいいから挑戦させる」

給与引き上げ 独自性ある商品カギ

「経営理念で従業員の物心両面の幸福を掲げているのに、私の甲斐(かい)性がなかった」。塚本会長は給与を思う水準に上げられなかったことについてこう述べた。上場したのは社長に就任した翌年の1989年。四半期決算の開示が始まった2000年代前半頃から株主重視の風潮が強まり、社員への配分が薄くなったとの反省があるようだ。

非上場化を機に、アメーバ経営の軌道修正、商品開発の発想や手法の転換に取り組む。近くに本社を置く小松ウオール工業のほか、コクヨやオカムラ、イトーキといった会社と競うには独自性ある商品が求められる。高付加価値商品による収益力向上と、給与引き上げの好循環をつくり出す必要がある。

コマニー 1961年に塚本幹雄会長の父にあたる信吉氏らが石川県小松市で設立。オフィス用間仕切りのほか、ドアやクリーンルームを手がける。1989年に名古屋証券取引所第2部に上場。2022年5~6月、塚本家の資産管理会社「コマツコーサン」(石川県小松市)がMBOを目的にTOB(株式公開買い付け)を実施。7月28日に上場廃止予定。