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ケアの「脱家族化」を 京都大学教授・落合恵美子氏

――出生率が一段と低下しました。

「コロナウイルス禍で密を避ける動きもあったし、経済的な不安も増えた人が多かったので、出生率は下がるだろうと予測しており驚きはない。基本的な問題として、子育てにはお金がかかる。結婚して子どもができても共働きできる社会にし、1本ではなく、2本の細い大黒柱で家庭を支えるように変えていく必要がある」

――共働きが進むと、育児や家事などケアを誰が担うかという問題がでてきます。

「欧米は70年代以降、ケアの『脱家族化』が進んだ。北欧やフランスは保育園整備や家で子どもをみてくれる認定保育ママ制度など国家が関わる分担が進んだ。米国では家事をしてくれる人を雇うといった市場による分担が進んだ」

「日本は80年代以降、むしろ専業主婦を優遇する政策に転じ、ケアの脱家族化が進まなくなった。そしてまだそうした仕組みが残っている。女性の医師が子育てとの両立が困難なために仕事を辞めるなど、世界から見ると信じられないといわれる」

――ケアの支援を充実すれば出生率は回復しますか。

「アジアでもシンガポールはメイドが普及していて、女性が働き続けやすい。ケアサービスの脱家族化が進んだ例だ。韓国では近年、0~5歳までの保育を無償化するなど急速にケア費用の脱家族化が進んでいる。しかし両国とも出生率は改善していない」

「教育費や住宅費などの自己負担の重さ、ワークライフバランスの悪さなど、東アジアの社会に共通する問題がネックになっていそうだ。ケアを育児や家事、と狭く捉えるのではなく、人を育むのに必要な幅広い仕組みと捉え、その改善が必要だ。日本も大学費用の負担が重い。奨学金の充実などが必要だろう。さらに言えば、自然増には限界がある。人口を維持したいなら移民の議論も必要だ」

 

おちあい・えみこ 家族社会学や歴史社会学が専門。日本やアジアにおける家族やケアのあり方を分析している。江戸時代の「家」の実態の研究もある。