https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62550280S2A710C2DTA000/
今後の針路を巡り経営者と株主が議論を交わした。株主から提案を受けた企業は過去最多の77社となった。機関投資家は議案の内容を精査して是々非々で判断するようになっており、情報開示や資本効率を求める議案には一定の賛成が集まった。
三菱UFJ信託銀行によると、6月に総会を開いた企業では77社に292の株主提案があった。定款変更が184件を占めた。剰余金処分や自社株買いや自社株消却などが続く。
今回の株主提案で賛成率の高さが目立ったのが、取締役の個別報酬額の開示を求める議案だ。
1人の株主から7つの株主提案を受けた三井金属。そのうち取締役と執行役の報酬や賞与などの個別開示を定款に盛り込むよう求める議案は44%の賛成を集めた。世紀東急工業では相談役の個別報酬開示を求める定款変更議案が39%、シチズン時計の取締役報酬の個別開示を求める定款変更議案も39%の賛成を集めた。
定款変更は特別決議で、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となる。ただ特定の株主の提案に他の株主の賛同が広がっている。運用会社でも、野村アセットマネジメントなど個別報酬の開示には株主提案でも原則賛成票を投じると定める議決権行使基準を持つところが多い。
フューチャーベンチャーキャピタルでは、個人投資家の金武偉氏が提案した取締役選任案が可決された。事業再生投資など新分野に事業領域を広げる成長戦略への転換を求めた主張に、他の株主が賛同した。金氏の持ち株比率は2.5%だったが、株主提案への賛成率は68%に達した。北越メタルでも筆頭株主のトピー工業による3人の取締役候補選任案が可決された。
企業統治改革を背景に政策保有株は減少し、企業株主は減っている。機関投資家はスチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)で議案別の議決権行使結果の開示を求められるようになった。議決権行使基準も年々厳格化し、株主提案であっても「正論に対してノーと言いづらくなっている」(三菱UFJ信託銀の牛田明氏)。
他の株主に賛同が広がる株主提案がある一方で、大半は賛成率が数%にとどまる。不正融資のあったスルガ銀行では嵯峨行介社長の取締役解任など10の株主提案があったが、「不正問題の追及は別の形ですべきだと考える投資家が多い」(信託銀大手)こともあり賛成率は3~9%だった。電力会社に「脱原発」を求める提案も賛成率は5%前後だった。

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