ミドル世代の8割、スタートアップに転職意欲 民間調査

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC063B20W2A700C2000000

 

事業の革新性や裁量の大きさが魅力のようだ。一方で「年収が下がっても転職したい」との回答は2割程度だった。スタートアップの待遇改善が人材獲得のカギを握る。

エン・ジャパンが運営する転職サイト「ミドルの転職」を使う30~50代の社会人を対象に調べ、908人から回答を得た。同社によるスタートアップ転職に関する調査は初めて。

スタートアップへの転職意欲を尋ねた質問では「積極的に転職したい」が16%、「条件次第で転職したい」が60%で、前向きな回答は計76%を占めた。「どちらかといえば転職したくない」(17%)と「転職したくない」(4%)を上回った。年代別にみると、前向きな割合は50代が82%と最も高く、40代は74%、30代は65%だった。

「転職したい」と回答した理由で最も多かったのは「先進性・革新性のある事業に携われる」で46%に上った。「責任あるポジションに就きたい」が23%、「スキルや経験をいかしたい」が14%と続いた。

年収など条件面は慎重な姿勢も目立った。「転職したい」という回答者のうち38%は、年収が減る場合は転職したくないとした。年収の減少を受け入れる割合は25%にとどまった。「ミドルの転職」の営業責任者を務めるエン・ジャパンの峯崎直哉営業部長は「30~40代は現職でそこそこの年収があり、年収が下がる転職への抵抗感が大きい」と指摘する。

エン・ジャパンの別の調査によると、スタートアップの人材募集時の平均年収は2021年4~9月時点で804万円。上場企業平均(819万円)との格差は縮小傾向にあり、給料とは別にストックオプション(株式購入権=SO)制度を設ける企業も多い。ただ「ミドル世代は実際にもらった経験のないSOより、毎月の給与が安定的かを重視する傾向にある」(峯崎部長)。

「転職したくない」と回答した理由のトップは「将来性が不安」(34%)だった。転職時点での年収水準だけでなく、息長く働ける会社かどうかを気にしているようだ。

実際にスタートアップに転職した経験を持つミドル世代は全体の13%。うち「想像よりも良くなかった」との回答は39%と「良かった」(25%)を上回った。「大企業出身の中高年が多く、意外と保守的だった」(40代女性)との声もある。転職後のミスマッチを防ぐには入社前に社員の話を聞くなどして企業風土を確かめる必要がありそうだ。

(新興・中小企業エディター 鈴木健二朗)