パナソニックHD、マンション管理を省人化 業務半減

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住民がインターホンを通じて掲示物を確認したり、管理会社が外部の事業者に遠隔操作で鍵を貸し出したりできるシステムを販売する。4月の法改正で管理状況などに問題がある物件を自治体が指導することになり、その場合は資産価値が下落する恐れがある。マンションの管理人は人手不足が深刻で、省人化サービスで顧客の資産価値の下落を防ぐ。

遠隔管理サービスとインターホンを連携

パナソニックHD傘下のエレクトリックワークス(EW)が開発した遠隔管理サービス「モバカン」を10月から販売する。まずは首都圏の中古マンションの管理会社に提案し、関西や東海地域でも営業をかけて2030年までに4000棟の導入を目指す。

サービスとブラウザー機能付きのインターホンを連動させる。インターホンの画面に表示されたQRコードを住民がスマートフォンで読み込むと、掲示物や管理組合の議事録が表示される。インターホンを操作してゲストルームなど共用施設の予約もできる。

鍵の貸し出しも省人化する。鍵を収納したボックスをマンション玄関前などに設置する。清掃などの外部事業者が到着すると、管理会社がボックスの解錠パスワードを発行し、管理人が立ち会う手間を省く。

サービスは1棟あたり1~500戸規模を想定している。料金は初期登録料に加え、1棟あたりで月額3万~10万円。EWの試算では、モバカンの導入でマンションの管理人の業務時間を5~6割ほど削減できる。

法改正でマンションの資産価値下落の恐れ

矢野経済研究所(東京・中野)によると、中古住宅の買い取り再販市場は25年には約5万件と20年比で約4割増となる見込みで、特に中古マンションの需要が高い。EWは国内マンション向けのインターホンのシェアは約5割としており、商機があると判断した。

背景には4月に改正マンション管理適正化法が施行されたこともある。自治体がマンションの修繕計画や管理状況などをチェックし、問題がある物件に指導・助言する。指導などを受ければマンションの資産価値が下落する可能性があり、所有者と管理会社の双方に痛手だ。

一方、マンション管理組合などの議事録や掲示物は管理人が回覧板などアナログな手法で周知するケースが多い。管理人は人手不足や高齢化が深刻だが、国の求める基準を満たすには、管理費を上げて人員を増やすなどの対応が必要になる。管理業務の省人化は住民や管理会社にもメリットがある。EWの担当者は「住民の利便性と資産価値を高め、マンションの管理費の上昇も防ぐ」と話している。

(松本晟)