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業績や株価に連動する欧米型の報酬体系へのシフトが進んできたところに、好調な企業業績が重なり、高額報酬が相次いだ。1億円以上の役員数では、日立製作所が首位だった。
6月末までに公表された有価証券報告書を東京商工リサーチが集計した。報酬が1億円以上の役員がいる企業は過去最高の284社だった。
1億円プレーヤー増加の背景は好調な企業業績だ。東証プライム上場企業の22年3月期の純利益は39%増で18年3月期以来、4年ぶりに最高益。企業統治改革などを背景に業績や株価などに応じて報酬額を決める企業が増え、好業績が報酬に反映された。
日本企業が前回、最高益だった18年3月期と比べると、1億円プレーヤーは114人、社数は44社増えた。1億円プレーヤーの多い企業のランキングで18年3月期は10位以下で、22年3月期に10位以内に入ったのは、東芝やバンダイナムコホールディングス、ダイキン工業など9社だった。
前回首位の三菱電機は品質問題を受け役員報酬を減額した影響などで1億円以上は1人にとどまった。1億円以上が6人のソニーグループは15位だった。
1億円プレーヤーの最多は3年連続で日立製作所。22年3月期はIT(情報技術)部門や送配電設備などが好調で連結純利益が2期連続の最高益だった。役員の報酬総額は51億円で、前の期より6億円強、18年3月期より約14億円多い。増加額の大半は業績や株価に連動する部分だ。
2位の東芝は前の期の1人から13人に急増した。業績達成度や株主総利回り(TSR)などを役員報酬に反映する仕組みのため、21年春以降の株高で連動部分が前の期の6000万円から16億円に急増した。
6位のバンダイナムコホールディングスはゲームや玩具が伸び22年3月期の連結純利益は3期ぶりの最高益。報酬額の半分を占める業績連動報酬が増えた。6位の三井不動産や9位のダイキン工業と日産自動車も業績などに連動する報酬の増加が主な要因だ。
日本企業の報酬体系は業績連動の比率が増すなど徐々に欧米型に近づきつつあるものの、報酬水準は及ばない。デロイトトーマツグループによると、米国の最高経営責任者(CEO)の報酬の中央値は17.9億円、英国は5.5億円で、日本の1.3億円とは開きがある。
個人の報酬額の首位はZホールディングスの取締役でLINE代表取締役も兼任する慎ジュンホ氏だった。慎氏は長年にわたり、LINEのサービス開発や海外事業などをけん引してきた。報酬総額43.3億円のうち、41億円がストックオプション(株式購入権)だった。
Zホールディングスでは共同CEOの出沢剛氏が9.1億円で11位、エンタメ部門責任者の舛田淳氏が7.2億円で17位。いずれもLINE出身で、ストックオプションが寄与した。
長年にわたり経営を主導した「大物経営者」が退任し、多額の慰労金を受け取り個人ランキングの上位になった。2位はタクシー大手の第一交通産業の創業者である黒土始氏で、報酬総額19億円のうち、15.9億円が特別功労金だった。
また、21年6月の総会でスズキの会長を退いた鈴木修相談役は11.7億円の報酬総額の大半が退職慰労金だった。富士フイルムホールディングスの最高顧問を退任した古森重隆氏は8位で、報酬総額11.2億円のうち役員退職慰労金などが8.2億円だった。
(岡本孔佑、秦野貫)

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