https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62419230X00C22A7EE9000
7日に米大手投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントと資産運用などでの業務提携を発表した。傘下の三井住友信託銀行がアポロのファンドに15億ドル(約2000億円)出資し、両社で連携して日本市場向けの商品を開発する。
日本の個人金融資産は2000兆円を超えるが、現金・預金が半分以上を占めている。個人の運用手法の選択肢を増やすことで「貯蓄から投資へ」の動きを後押しする。
海外では未公開株や不動産といった非上場の資産に活発に資金が流れ込み、ユニコーン(評価額10億ドル以上の未公開企業)育成に役立っているとされる。日本は未公開株投資の規模が海外に比べると小さく、ユニコーンが誕生しにくい要因の一つとなってきた。三井住友トラストと米アポロの提携は家計に眠る金融資産と未公開企業をつなぐ動きとして注目される。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も国内のスタートアップへの投資に乗り出した。未公開株投資が本格的に広がれば、日本の企業の新陳代謝を促し、中長期的な成長力の押し上げにつながる可能性もある。
未公開株などはオルタナティブ(代替)資産と呼ばれる。債券や上場株などと組み合わせることでリスクを分散しながら相対的に高いリターンを狙うことができる。これまでは最低投資金額が大きく、大手の金融機関や年金基金、保険会社などに購入が限られていた。
欧米のファンド運用会社はここ数年、個人でもオルタナティブ資産に投資できるような商品開発に取り組んでいる。「オルタナティブ資産の民主化」という動きで、最低投資額を数百万円に引き下げ、毎月や毎四半期に購入や解約を受け付けるといったものだ。
三井住友トラストはオルタナティブ投資で豊富な実績を持つアポロと組むことで、公募投資信託やファンドラップなど個人が投資しやすい形式での商品提供を目指す。魅力的な商品を国内の投資家が購入しやすい形にして、幅広い資金を呼び込むことを狙っている。
アポロは米国を本拠とするファンド運用会社で、運用資産規模は2022年3月末で5128億ドル(約70兆円)。アポロはKKRやブラックストーン、カーライルなどと並ぶ世界的なオルタナティブ運用会社で、同社のファンドは「世界で人気で、長年の関係性などがなければなかなか買えない」(国内大手金融機関)。
三井住友トラストは政策保有株を将来ゼロにする目標を掲げ、投資に余力が出始めている。約2000億円の大口出資者として、アポロのファンドの特徴や実績を把握する。三井住友トラストはアポロの日本国内における企業やインフラ、不動産への投資などでも協力する。
(和田大蔵)

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