https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM17D8X0X10C22A6000000
政府系ファンドのGICなどシンガポール勢によるホテルや集合住宅を取得する動きが相次いでおり、2022年の投資額は3年ぶりの高水準となる可能性がある。不動産投資信託(REIT)市場にも流れ込んでいるとみられ、世界と比べ日本のREIT市場が底堅い一因になっている。
シンガポール勢の日本の不動産投資はこれだけではない。2月にはGICが西武ホールディングス(HD)のホテル・レジャー31施設を約1500億円で、3月には大手上場ファンドのアスコット・レジデンス・トラストが大阪や福岡の賃貸住宅・学生寮を約100億円で取得すると発表した。
GICやアスコットのような世界中の不動産に投資する大手にとって、市場規模が大きく透明性も高い日本はもともと主要な投資地域の1つだった。GICの不動産部門のリー・コックサン最高投資責任者(CIO)は西武HDの施設取得について「強い国内需要に加えて、今後海外からの観光需要が回復することを考えると、底堅い利回りが見込める」と話す。
ここにきて追い風となっているのが、急速に進む円安だ。円はシンガポールドルに対して6月に一時、1シンガポールドル=98円台と、1985年以来37年ぶりの安値をつけた。タイバーツ、マレーシアリンギに対しても、それぞれ約15年ぶり、約7年ぶりの安値圏で推移している。自国通貨や米ドルで資金を調達することが多いアジアの投資家にとって歴史的な円安は日本への不動産投資を後押しする。
不動産サービス大手CBREによると、21年はアジア太平洋地域からの日本の不動産投資が25億ドルに達し、20年比で6.1%増えた。現時点で22年はGICなどの3案件だけで21年の投資総額の半分に達している。今年後半に円安で対日投資がさらに勢いづけば19年の水準(42億ドル)に近づく可能性がある。
各国の中銀が利上げにカジを切って金利水準が上がる中、日本は大規模緩和を継続して金利が抑えられていることも、海外投資家の対日投資の意欲を高める一因になっている。CBREの本田あす香リサーチディレクターは「日本の不動産投資利回りの金利に対するスプレッドが、海外と比べて今後も相対的に高い水準で維持される可能性が高い」とみている。



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