佐渡島でフレンチ提供「お料理あなぐち」シェフ菊池猛氏 多彩人財

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建物や路地からは江戸時代から明治時代にかけて回船業で栄えた面影がうかがえる。佐渡米や山菜など地元産食材も使ったメニューを提供する。

宿根木は小木海岸の入り江に面した集落で、約1ヘクタールの土地に110棟の建造物が密集する。1991年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。その一角にある「お料理 あなぐち」は、うぐいすの鳴き声と日本庭園が来訪者を出迎えてくれる店舗だ。名称は、伝統的建造物の旧穴口邸に由来する。

サンフロンティア不動産会長で小木出身の堀口智顕さんが佐渡島の魅力を世界に伝えるために設立したサンフロンティア佐渡(佐渡市)が「あなぐち亭」を運営していた。2021年夏に堀口さんと話をし「お料理 あなぐち」の出店を決めたオーナーシェフの菊池猛さんは、東京・六本木や表参道、神奈川・平塚や川崎などのレストランで約25年間、腕をふるってきた。

菊池さんは約10年前から社会福祉法人で料理技術を指導してきた。「食材豊かな地方で料理するのが長年の夢だった」という。父親の出身地だった佐渡島の地域おこし協力隊として21年4月に着任した。料理指導や就農支援に携わっている。「福祉で人が集う取り組みを続けていきたい」と力を込める。

「お料理 あなぐち」の主力メニューはミニランチコース(1815円)だ。自家製パンとスープ、前菜3種の盛り合わせ、佐渡産鮮魚のブイヤベース仕立てまたは仔羊(こひつじ)のモロッコ風煮込み。パンは、佐渡にある農園の小麦粉「ゆきちから」を使う。アスパラガス、山菜など佐渡産食材をふんだんに楽しめる内容だ。

佐渡海鮮とチキンのライスヌードル「フォー」(1045円)や小木番所のかけ蕎麦(そば)十割(100g、660円)などの単品メニューも用意する。「ベトナム料理のなかにはコロニアルフレンチという文化が残っている」。菊池さんが作るフォーにはファンが多かったという。そばは「あなぐち亭」時代の人気メニューの一つでもあった。「佐渡産米粉を使ったフォーも作っていきたい」と話す。

予約制のランチフルコース(4180円)や、4人以上の予約制でディナーにも対応する。佐渡イチゴやあんぽ柿などを使ったデザートも楽しめる。2階建ての1階に座席数8卓20席。定休日は日・月・火曜日。日曜はカルチャースクールや就労支援に派生した販売会などのイベントを展開する。「集落の空き家を活用し住宅兼ゲストハウスをオープンしたい」と語る。

(橋本慎一)