吉祥寺人気に陰り? 住みたい街、20・30代は横浜・大宮 News 潜望展望

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リクルートの「住みたい街」ランキングで、毎年人気上位となる吉祥寺(東京都武蔵野市)。新型コロナウイルス下の郊外人気を受け、2022年調査では前年の3位から2位に浮上した。ただ首位の常連だったかつての勢いはない。背景には若い世代の人気が高くないことがある。「吉祥寺ブランド」に陰りが出ているのだろうか。

 

調査は住み替え機会が多い20~40代にインターネットで聞き取りしている。3月に発表した22年調査で、吉祥寺の人気を年代別に見ると、40代は2位だが、30代と20代は4位だった。21年以前の調査でも、40代の人気の高さに比べ、20代と30代は横浜や大宮(さいたま市)、恵比寿(東京・渋谷)の人気が高く、吉祥寺は3~6位にとどまる。

SUUMOの池本洋一編集長は「40代は若いときに『Hanako』などの雑誌やテレビが特集し、おしゃれで個性的な街というイメージが定着している」と指摘する。一方、今の20代や30代は「コスパ(費用対効果)が高くゆっくり過ごせることを重視する」ため、割高な店が多い吉祥寺より、割安に過ごせる街の人気が高くなりやすいという。

「駅前はチェーン店ばかり。均質化が進み、吉祥寺らしさが失われている」。こう指摘する地元関係者は多い。地価が高騰し、若い世代が新しい店を開業することが難しくなっているとされる。店主の高齢化や「ハーモニカ横丁」など駅前の建物の老朽化も課題だ。

若い店主は吉祥寺駅北口から徒歩10分ほどの東急百貨店より西の住宅地に出店してきた。駅前よりも家賃が安く、個性的な雑貨店やカフェが集まる。「東急裏」と呼ばれ、吉祥寺らしさを象徴する地域として発展してきた。

ただ東急裏にもアパレルや飲食大手が出店。地元不動産会社、リベスト(武蔵野市)の山田妙子・中道通り店店長は「不動産ファンドも進出し、地価が上がっている。ネット販売が主流となり、個人で店を開こうという人が減っている」と話す。

コロナ禍の影響も大きい。コロナ前は「物件が空けばすぐ埋まる」売り手市場だったが、コロナ後は一部で空き店舗が見られるようになった。山田店長は「一歩間違えれば、活気が失われる可能性がある」と危機感を強める。

大東建託では吉祥寺が4連続1位、横浜2位 みなとみらい3位

住みたい街ランキングは大東建託も19年から実施している。5月に発表した22年の首都圏版調査では、吉祥寺が4年連続で首位となった。2位が横浜、3位がみなとみらいだった。同社の宗健・賃貸未来研究所長は「地元県民に支持される浦和や大宮に対し、吉祥寺は首都圏全域から幅広い人気がある」と指摘する。

ただ、みなとみらいはリクルートの調査では36位。これは大東建託では横浜と入力すると、みなとみらいや桜木町などの近隣駅も候補として表示する「フリーワード・サジェスト方式」を採用しているためとみられる。リクルートの調査では都道府県を選択してから路線を選択し、その中から候補駅を選択する。みなとみらい線からみなとみらい駅を選択する人が少なかった。

リクルートの調査で吉祥寺が18年に首位から陥落した要因として、同年の調査方法変更が影響したのでは、との指摘もある。17年までシングル(単身者)、DINKS(子どものいない共働き夫婦)、ファミリーをそれぞれ同数で調査していたが、18年から年代、性別、地域の比率を国勢調査の人口分布に合わせ、より実態に即した調査方法に改めた。

結果的に吉祥寺を支持する人が多い40代の比率が下がり、順位に影響した可能性はある。ただ長谷工アーベストが実施している住みたい街ランキングでも、横浜は20年に吉祥寺を抜いて首位となり、21年は吉祥寺と同数だったが2年連続で首位だった。住環境や利便性を評価する声が多い吉祥寺に比べ、横浜は再開発が進み、発展していることを評価する声が多い。(堀江耕平)