シャワーヘッド「ミラブル」新商品、発売前に10万本受注 口内も洗浄する新機能追加

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浴槽やシャワーヘッドなどを手がけるサイエンス(大阪市)が6月15日、新たなシャワーヘッド「ミラブルzero」を発売した。5万円近い価格設定ながら発売前から注目を集めており、国内での販売目標としていた2023年3月末までに50万本の達成にも自信をみせる。

 

直径1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルより細かな気泡を混入した水流で、汚れを落とすシャワーヘッド「ミラブル」シリーズ。油性ペンで肌に書かれた汚れを落とすCMでも話題を呼んだ。霧のようなやわらかな水流「トルネードミスト」も特徴だ。

「メークはしっかり落としたいけど、シャワーの水圧が強すぎると肌にダメージがありそう」(20歳代女性)。こういった悩みを相談し合う女性は少なくない。こうした利用者らの口コミなどが広がり、従来品も人気を集めてきた。シャワーはほぼ毎日使うもの。だからこそ、ちょっとぜいたくがしたい。こうした需要を取り込み、18年夏のシリーズ発売以降、既に累計の販売数は100万本を突破した。

今回発売した新商品「ミラブルzero」の最大の特徴は、リング状の水流で歯の隙間などを洗う機能を追加したことにある。創業者の青山恭明会長は「お風呂で口をゆすいだりしている利用者は多い。シャワーに求められる機能は頭や顔だけにとどまらない」と、開発の経緯を説明する。

サイエンスの商品は消費者の声から生まれた物が多い。シャワーヘッドのミラブルシリーズの商品化も、浴槽に取り付けて細かい気泡を発生させる製品の利用者から「細かい気泡を顔にも浴びたいので、湯船に顔をつけている」という声が多数寄せられたことがきっかけだった。消費者がシャワーに何を求めているのか。消費者の声から導き出されたのが「口の中までシャワーで洗う」という発想だ。

とはいえ4万~5万円もする商品を簡単に買い替えてもらえるのか。青山会長にも葛藤はあった。背中を押したのは妻の一言だったという。「例えばiPhone(アイフォーン)は新たなシリーズが出ると、店舗に並んででも買い求めたい消費者が集う。商品の良さを体感している消費者は、どんな機能が新たに追加されたのか、気になって欲しくなってしまうものだ」

発売した新商品「ミラブルzero」の出足は好調で、発売前から10万本を超える受注があったという。「欲しいと思ってくれている消費者に早く商品が届くよう、国内6カ所の委託生産の拠点をフル稼働させている」と青山会長は笑う。

青山会長が子どものころ、大阪万博で見た「人間洗濯機」。そのときに感じた「未来の技術」をシャワーヘッドの形で具現化したともいえる。快適に過ごすため、出張時にはシャワーヘッドを持ち運ぶのがあたりまえ。すでに社内に広がっているそんな風潮が、消費者にもじわりと広がっていく。そんな未来をも青山会長は見据えている。