https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62275300S2A700C2EA4000/
少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の抜本改革が柱。「1億総株主化」を目指す政策だが、効果を高めるには、3つの条件がある。
1つ目は顧客本位の金融商品販売体制の確立だ。NISAが手本にしたのは英国のISA(個人貯蓄口座)。英国での投資信託などの販売はIFA(独立系金融アドバイザー)経由の比率が高い。同国は2012年末、IFAや販売機関が運用会社から手数料を得ることを禁止、顧客からの助言料だけを収入源にする大改革「RDR」を実施した。これにより高手数料の商品が優先的に売られる利益相反が起きにくくなった。
日本の金融機関では高手数料の商品が優先的に売られがち。独立したアドバイザーもいるが主力は「IFA」と自称する金融商品仲介業者。証券外務員の資格を基に金融機関と手数料をシェアする。高手数料の商品を売るバイアスが残り、英IFAとは実態が異なる。良心的な業者と手数料重視の業者が玉石混交だ。
独立系のファイナンシャルプランナーも、IFAや保険募集人を兼務し、高手数料の保険商品などを売る事例が指摘され続ける。
英国とは状況の違いもあり同じ改革は難しい。しかしNISAが一層の普及を目指すなら、非課税期間や投資可能期間の恒久化と同時に、利益相反のないアドバイスを得られる日本型の体制整備も望まれる。
2つ目の条件は投資に対するイメージの転換だ。イデコの加入者は急増中とはいえ、実は加入可能者のいまだ5%程度にすぎない。「何がいつ上がるか当てないと損をする」という投資への恐怖感が、税優遇が非常に大きなイデコにすら加入をためらわせる。
しかし例えば、投信を使って代表的な世界株指数(MSCI WORLD、配当込み、円ベース、コスト年0.2%を前提)に20年投資したらどうか。終了時期を1990年1月から2022年3月まで1カ月ずつずらし計387の期間で計算すると、平均で資産は4.3倍(年率7%強)に増えた。「長期・分散・低コスト」で資産を堅実に増やしやすいことを、広く周知する投資教育が大事だ。
3つ目は「自動化」。イデコでも企業型確定拠出年金(DC)でも、資産残高の半分弱は預金など元本確保型商品。米英は私的年金などが「デフォルト(初期設定)商品」に広く分散された投信を指定することで、半ば自動的に長期投資を促す。結果、加入者が大きな資産を形成できている。
米国は制度上、元本確保型商品をデフォルト商品の対象から原則除外している。米国を参考にした見直しも検討されていい。

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