民泊底入れの兆し 「エアビー飲み」追い風、訪日客期待

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コロナ禍前は近隣への騒音などで問題も指摘されており、日本民泊協会(大阪市)は質の高い民泊の認証制度を作って本格回復に備える。

民泊の認定施設数が廃止を上回る

全国でも民泊施設が集中する大阪と京都。国家戦略特区に基づく「特区民泊」は9割が大阪府に集まる。地方自治体に届け出れば営業を認める住宅宿泊事業法(民泊新法)でも大阪市は4000件超と全国の自治体でトップで、全国の1割強を占める。

「民泊ライン」とも呼ばれた大阪メトロ堺筋線の長堀橋から日本橋、天下茶屋まで歩いてみると、「民泊」の看板を掲げながら休止中の施設も多いが、古民家を改造した民泊には宿泊者のスーツケースが運び込まれていた。天下茶屋駅から歩いて5分ほどの住宅街では3階建ての民泊物件が建設中で、6月初めには住民説明会も開かれた。

大阪市内で特区民泊の認定施設数は、この4月末で3173件。コロナ禍の2年間で358件減少したが、5月以降は認定施設数が廃止施設数を上回っている。日本民泊協会の大植惇生代表理事は「いまだに厳しいが、下げ止まりの印象がある。3月以降、民泊事業者に前向きなムードが広がっている」という。

利用回復は日本人の若者がけん引している。民泊仲介大手の米エアビーアンドビーにちなんで「エアビー飲み」と称し、友人グループで部屋を借りて飲み会をするケースが目立つ。「ホテルより安く、5人で同じ部屋に泊まれる」と、大学生(22)。20代の利用者28人に尋ねたところ、27人が「また民泊を利用したい」と答えた。

中国人投資家向けに不動産投資を仲介する東寧(同)の永田林社長は「大阪は万博やカジノ誘致で将来は観光客が見込める。コロナ禍が落ち着けば秋以降に民泊投資が増えるのでは」とみる。

質の向上へ認証制度を準備

世界的には観光客が回復傾向にある。エアビーによると、22年第1四半期(1~3月)の世界の予約は19年同期に比べて2倍以上。長期利用の滞在が過去最高を記録したという。民泊仲介の百戦錬磨(仙台市)でも全国的に利用者は増加傾向だ。地方の貸別荘や農家民宿などで利用が戻りつつあるという。ただ「(外国人の個人旅行の)開国を急がないと日本が旅行先の選択肢から外されてしまう」と懸念する。

インバウンドの本格的な回復に向けて民泊の課題も多く残る。三井住友トラスト基礎研究所の馬場高志部長は「民泊は通常のホテルより不便な面も多い。ホテルが十分にある状況で、あえて民泊を選ぶ人は少ないのでは」と話す。民泊が生き残るには「大人数での利用や、長期滞在など民泊ならではの長所を生かすべきだ」と指摘する。