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暖かく湿った気流が強く、梅雨前線が活発化し線状降水帯による大雨が降りやすい。背景には地球温暖化もあるとみられる。豪雨や熱波など「極端気象」は一層激しく、高頻度になる公算が大きい
今年の梅雨は北陸と東北北部を除き、1951年以降でもっとも短い。梅雨明けの発表は東海と九州南部を除き、過去もっとも早い。数十年に1度あるかないかの異常な現象といえる。
梅雨前線はしばらく北日本に停滞した。梅雨がないはずの北海道も一時、大雨となった。例年だと九州や四国など西日本中心に起きる「梅雨末期の豪雨」に似た状況となった。日本列島が全体として、数百キロメートル南下したイメージに近い。
北日本は最近、台風の影響もよく受ける。2016年には、複数の台風が北海道に上陸した。だが、一つも接近しない年もあり不規則だ。
北半球全体が温暖化すると、冷涼な空気と暖気の境界で起きる梅雨が消えるようにも思えるが、そう単純ではない。前線の生成には「亜熱帯ジェット」と呼ばれる上空の強い西風がかかわる。気温が上がり上昇気流が強まると「ジェットも強まる可能性がある」(東京大学の中村尚教授)。結果的に、前線は活発化することも考えられる。
日本の将来気候が温暖化でどう変わるかをまとめた、気象庁と文部科学省の報告書「日本の気候変動2020」も、梅雨前線に伴う降水帯は強まると指摘する。位置は南下するというが、計算精度などの面から明確な結論は出ていない。
ただ、梅雨前線などによる雨の降り方が激しくなるという点では、多くの専門家が一致する。気象研究所のグループは最近の複数の豪雨例を分析し、温暖化による気温上昇が雨量を押し上げたことをコンピューター計算で詳しく示した。
英オックスフォード大学の研究者らも、個々の極端気象と温暖化との因果関係を調べている。19年の台風19号が関東甲信地方にもたらしたような大雨の発生確率は、温暖化によって7割近く高まったと推定する。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの分析では、温暖化が進むと雨が降りやすい地域ではさらに雨量が増し、洪水などが起きやすくなる。逆に少ないところでは一層減り、干ばつの恐れが高まる。
今年3~5月はインドやパキスタンが猛暑となった。6月後半以降は欧州や米国を熱波が襲い、中国南部も大雨となった。日本の異例の梅雨と猛暑は、大気の流れを通してこれらとも関係がある。極端気象は世界で同時多発的に起きることが多く、経済損失は膨らみかねない。予測や影響評価で国際連携を強めるのが効果的だ。

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