https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28B530Y2A620C2000000
クレ兄さんさん(ハンドルネーム)は、日本株と米国株を運用する二刀流の投資家だ。およそ1対1の割合で資産を配分し、分散投資を心掛けている。
クレ兄さんさんは初めから両刀使いだったわけではない。転身したのは2018年頃。11年に学生時代の先輩が運用していたのを見て300万円ほどで株式投資を始めた時には、みずほフィナンシャルグループや三菱商事など、大型株を中心とした日本株のみで運用していた。
その後、1年ほどはほとんど利益が出ず、上昇したのはキャンドゥのみ。株価が取得価格を大きく上回るのを横目に理由を探ると、「株主優待を実施していたことが大きかった」と気付いた。
この経験から、その後はクリエイト・レストランツ・ホールディングスやトリドールホールディングスなどの外食優待銘柄の他、QUOカードなどの金券やカタログギフトがもらえる優待銘柄への投資に移行する。12年にアベノミクスが始まると、資産は一気に1000万円の大台に到達。マンション購入の頭金や諸費用、自動車購入のために500万円ほど資金を充てたが、優待株や連続増配株で運用を続けた結果、17年までに資産を2000万円まで増やすことに成功した。
優待株から高配当・連続増配株にシフト
だが、18年にはこれまでの投資スタイルから一変して、米国株運用への移行を決意。きっかけは、「仕事が不慣れで精神的にしんどい場所に異動したこと」だった。当時はまだFIRE(ファイナンシャル・インディペンデンス リタイア・アーリー、経済的な安定を早期に確立し、早期リタイアする生き方)という言葉が浸透していなかったが、「アーリーリタイアを目標に、優待株投資家から高配当・連続増配株の投資家へ転身することを決めた」と話す。当初は日本株メインの取引で、徐々に米国株の比率を増やしていった。
20年のコロナショックで外食株が軒並み急落したことを機に、外食優待株は全て売却した。売却資金は日米の高配当株に振り向け、現在は税引き後で4%程度の配当を得ているという。足元では「インフレが加速しているため、配当金を高配当株のさらなる購入に充てている」。株式資産は、先のマンション購入代金の他、結婚式や新婚旅行の費用、自動車3台など大きな資金捻出を差し引いても、約3000万円まで膨らんだ。
保有する米国銘柄は、コカ・コーラ、スターバックス、ジョンソン・エンド・ジョンソン、プロクター・アンド・ギャンブル、シスコシステムズなど、連続増配の大型企業の株だ。業種の偏りがなく、バランスのよい配分を心掛けている。一度投資した銘柄は、大減配や成長ストーリーが崩れない限り、基本的に長期保有する方針だ。
石油株上昇の波に乗る
コロナショック後の金融緩和相場には完全に乗れなかったが、ウクライナショックでは石油株の上昇により資産拡大に成功している。新型コロナウイルスの感染収束に伴う経済活動再開で原油価格が上昇するとの予想から、エクソンモービルやシェブロンなどを購入し、ポートフォリオの10%以上を石油株で固めたことが奏功した。また21年秋には、米防衛大手ロッキード・マーチンを割安とみて投資。ロシアのウクライナ侵攻に伴う防衛関連株上昇の波に乗った。
平日は公務員として働くクレ兄さんさんは、帰宅後に気になる銘柄を調べたり、投資情報誌や動画投稿サイトのユーチューブを参考にしたりして、仕事と投資を両立させている。米国企業の決算発表時は、日本語サイトやツイッターで発表内容をまとめている投資家の投稿などから情報を入手している。来年は、保有マンションの含み益の約1700万円を元手に不動産投資にも挑戦したいとしている。
(井沢ひとみ)



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