4~6月(上) 高リスク資産、軒並み安 ビットコイン57%、半導体株25% 「コロナバブル」逆回転

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新型コロナウイルス禍を受けた世界的な金融緩和に沸いたマネーが逆回転。特にリスクの高い暗号資産(仮想通貨)は急落し、半導体株なども大きく下げた。景気の影響を受けやすい非鉄金属、安全資産とされる金も売られた。崩れ始めた「コロナバブル」の行方に投資家は身構える。

 

4~6月は主要23資産中20資産の価格が下落した。下げが目立ったのは代表的な仮想通貨であるビットコインで、57.3%安と四半期として過去最大級の下落率となった。1~3月期は前期比でほぼ横ばいだったが、急速に下げが進行した。緩和マネーを追い風に史上最高値を付けた2021年11月から、1年もたたないうちに市場の雰囲気は一変した。

 

緩和マネーの流出は幅広いリスク資産に及んだ。株式市場で売りが目立ったのが半導体株や高PER(株価収益率)のグロース(成長)株だ。主要な半導体株で構成する米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は25.5%とリーマン危機以来の下落率を記録。グロース銘柄への集中投資で知られる上場投資信託(ETF)の「アーク・イノベーション(ARKK)」は39.8%下がった。

急ピッチの利上げで世界景気の悪化懸念が高まり、非鉄金属など一部の国際商品も調整色を強めた。投機筋を中心とした売りが膨らみ、アルミは4~6月に29.9%、銅は20.4%下落した。

そこに中国のゼロコロナ政策に対する懸念が加わった。「いつ規制が再強化されるか分からず、民間企業が設備投資に動きにくい」と丸紅経済研究所の李雪連氏は指摘する。世界景気のけん引役である中国の需要が落ち込めば、非鉄相場はさらに下がる可能性がある。

社債市場からもリスクマネーが離れた。米インターコンチネンタル取引所の指標によると、世界のハイイールド債(低格付け債)は11.4%下落した。特に信用力の低いCCC格以下の社債で利回りが上昇(価格は下落)している。

不動産市場には米金利の上昇が影を落とす。S&Pが算出する米不動産投資信託(REIT)指数は15.5%下落した。住宅ローン金利は30年固定が5.8%まで急上昇し、住宅ローンを提供するペニーマック・フィナンシャル・サービシス株は3月末から17.8%下落した。住宅大手のレナー株も13.1%下落している。

逃避マネーの受け皿となりやすい金も軟調。金価格は7.5%下落した。利上げ局面では金利の付かない資産である金を保有する利点が薄いとされる。「株価やビットコインの急落を受けて追加証拠金(追い証)を求められ、金を売らざるを得ない投資家がいた」(マーケット・ストラテジィ・インスティチュートの亀井幸一郎代表)との見方もある。

4~6月に値上がりした数少ない資産となったのがドルだ。ドルはこの3カ月で6.5%上昇。米利上げに伴う長期金利上昇を材料視した買いが入ったうえ、基軸通貨として安全資産を求める投資家をひき付けた。原油や天然ガスなどの価格も上昇した。ロシアからの供給懸念を受けてエネルギーは高止まりが続く。

リスク資産への逆風は7~9月もやみそうにない。仮想通貨は金融当局の規制強化観測もあり、投資家心理が上向く兆しがみえない。楽天ウォレットの松田康生氏は「インフレの終わりが見えてくるまでは本格反転は期待しにくい」と指摘する。

米バンク・オブ・アメリカが6月に実施したファンドマネジャー調査によると、機関投資家の資産別配分は現金が過去10年平均と比較して最も高くなった。崩れゆくバブルを前に、投資家のリスク回避姿勢は一段と強まっている。