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国税庁が1日発表した2022年1月1日時点の路線価は、前年の約3倍となる20都道府県で平均値が上昇した。全国平均も2年ぶりにプラスだった。在宅勤務の拡大などで東京都心で下落し、郊外で上昇するコロナ禍での変化も映し出す。
路線価は主要道路に面した土地1平方メートルあたりの標準価格で、相続税や贈与税の算定基準となる。
全国平均は前年比で0.5%上昇した。前年はマイナスだった東京、大阪、愛知など13都府県がプラスに転じ、上昇した都道府県は前年の7から20に増えた。平均値が下落したのは静岡や兵庫など27県(前年は39都府県)。横ばいはゼロだった。
再開発が盛んな地方の主要都市で上昇が目立つ。全国トップの4%上昇だった北海道は、札幌市でJR北海道などが複数の高層ビルの建設を計画する。コロナ禍からの経済回復をめざし、商業施設やマンションの新設を進め、市中心部の活性化につなげる。
6月に就任したJR北の綿貫泰之社長は「不動産事業を伸ばし、鉄道を支える柱に育てる」と強調する。北海道新幹線の札幌駅開業や冬季五輪招致を見すえ、まちの玄関口の装いを新たにする。
3.6%上昇した福岡県では、福岡市の中心部で「天神ビッグバン」と呼ぶ大型再開発が進む。25年までの供給面積は約26万平方メートルと、直近の市内賃貸オフィスの総面積の約1割に上る。
大型開発は周辺地域での住宅需要を高め、ファミリー層などの流入につながる。福岡のほか、今回プラスに転じた愛知でも世帯数が増加。三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭・投資調査第2部長は「住宅の実勢価格はコロナ禍でも上昇し、高値圏が続く」と指摘する。
都の中心部では23~25年にかけて大型開発が相次ぎ、オフィスの供給過多で賃料の下落傾向は当面続くとの見方は強い。一方、千葉県市川市の本八幡駅前通り(3.3%上昇)や川崎市の川崎駅東口広場通り(5.9%上昇)など周辺地域で路線価は軒並み上がった。在宅勤務が定着したファミリー層などへの賃貸マンションは堅調に推移する。
海外マネーの流入はコロナ禍からの回復を左右しそうだ。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、世界の都市の22年1~3月の不動産投資額で日本の首都圏は38億ドル(約5000億円)。前年同期から51%減った。
JLLの大東雄人・リサーチ事業部ディレクターは「コロナ禍での厳格な水際対策が不動産取引の障壁になった」と話す。円安傾向もあり、日本の不動産への海外投資家の関心は高い。水際対策の緩和など海外マネーの呼び込みも課題となる。

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