https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN00004_S2A700C2000000
実際に景気後退を判断するのは全米経済研究所だが、仮に今回見送られても年内の景気後退入りは避けられそうにない。米連邦準備理事会(FRB)は政策金利を年内に3.4%に引き上げる方針で、景気に中立な水準とされる2.5%を大幅に上回る。各種調査での消費者心理の悪化を踏まえると、消費が力強さを取り戻す可能性も低い。
FRB高官の多くは「景気後退は基本シナリオではない」(ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁)と表向きは景気後退の可能性は低いと主張する。市場への影響を考えてのことかもしれないが、そんな配慮とは無縁のFRBや連銀のエコノミストからは相次いで景気後退入りの予想が出ている。ウィリアムズ総裁のお膝元、NY連銀の分析チームは6月17日、「経済のハードランディングの可能性は80%」と予想するリポートを出した。
こうしたリポートはパウエル議長を含むFRB高官も当然読んでいる。今後の経済データで改善が見られなければ、高官らの発言も徐々に悲観に傾くだろう。
ただ、前向きな材料もある。米国の家計や企業、金融機関の財務状況が極めて良好な点だ。なかでも家計が保有する資産は3月末で167.9兆ドル(2京2700兆円)と過去最高水準にあり、一方で負債は18.6兆ドルに過ぎない。その後の株価下落で金融資産は減ったが、保有不動産の価値は高まった可能性が高い。
財務状況が支えとなり、消費が落ち込んでも深みにはまらず、不況を増幅させる金融危機が起きる可能性も低い。とはいえ、インフレが続く限り金融政策や財政政策による景気刺激は期待しにくい。つまり「景気後退の落ち込みは浅いが長引く、と想像できる」(ゴールドマン・サックスのデービッド・メリクル氏)。米国野村証券も2022年10~12月期から小幅のマイナス成長が5四半期続くと予想する。
株式相場も過去の不況のようにショックが襲った後にV字回復するパターンではなく、上値が重い時期が長く続くのかもしれない。

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