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路線価、観光・住宅地で郊外に光 コロナで明暗 長野・白馬、ワーケーションで上昇

主要な観光地はコロナ禍の影響縮小を期待して上昇に転じる地点があったが、コロナ禍前から訪日外国人客需要への依存度が高かった繁華街は下落が続き、明暗が分かれた。

 

全国の税務署管内の最高路線価地点で前年比プラス20%と最大の上昇率だったのが長野県白馬村だ。リモートワークの普及で、仕事をしながら余暇を楽しむ「ワーケーション」向け物件を探す人が増えたことが背景にあるとみられる。

白馬村で別荘販売を手がける不動産会社によると、東京・大阪などの都市圏に住む20~30代の夫婦からの問い合わせが目立つという。金融系のシステムエンジニアやIT(情報技術)関係の仕事をしつつ「自然豊かな白馬の環境を楽しみたい人が多い」。

同社が所有する分譲向けの土地価格はコロナ禍前は1坪(約3.3平方メートル)当たり2万円だったが、昨年は同約3万円で取引されるようになった。「1つの物件に5~6件のキャンセル待ちが発生するケースもある」という。

在宅勤務の広がりによる移住効果で上昇したのは白馬村だけではなく、同県軽井沢町はプラス2.1%、茨城県守谷市でもプラス6.3%と上昇基調が鮮明となった。

主要な観光地でもコロナ禍の影響緩和を期待し、上昇する地点が目立った。昨年のマイナス3.0%から反転し、プラス3.1%となった京都市の四条河原町周辺。6月下旬、百貨店や飲食店が軒を連ねるメインストリートは浴衣姿で町歩きを楽しむカップルや修学旅行生の集団が行き交っていた。

手拭いなどを扱う店舗ではじっくりと商品を見比べる客が増えているという。女性店員は「感染状況が落ち着き、余裕をもって観光ができる雰囲気が戻ってきているのではないか」とみる。路線価は京都市内全体で上昇基調で、同市中京区の主要地点でもプラス3.0%、上京区もプラス2.3%などとなった。

東京・浅草の雷門周辺も前年比プラス1.1%と、10%超の下落だった昨年から反転。仲見世通りの人形焼き店の従業員は「地方からの観光客や学生を中心に人出がじわじわと増えている」と話す。売り上げはコロナ前の7割だが「今後は中国などからのインバウンド(訪日外国人)も増えてほしい」と期待を寄せた。