15年で資産を4倍超に 中小型株への厳選投資で成功 個人投資家調査2022 勝ち組に学ぶ必勝テク(上)

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日経マネーが毎年実施している「個人投資家調査」。16回目となる今年は1万4000人近くから回答が寄せられた。その中から、金融資産を4倍以上に増やした人や過去4年連続でプラスの成績を残した人を抽出。これらの勝ち組投資家に個別に取材し、勝ちパターンを分析した。3回連載で紹介する。初回は中小型の割安株に集中投資して、金融資産を約8000万円まで増やした30代の会社員投資家の実践例だ。

イタルさん(ハンドルネーム)は、中小型のバリュー(割安)株投資家だ。収益力に比べて割安な株式に集中投資をする収益バリュー投資を得意とする。学生の頃にアルバイトで稼いだ100万円を元手に株取引を始め、2022年までの15年間で約8000万円まで資産を膨らませた。

もっとも、始めた当初は失敗もあった。コマツ三菱商事など、国際的な優良株に投資したところ、08年のリーマン・ショックで評価額が半減したのだ。11年頃にはバリュー株投資が人気を博したことなどを受け、株主優待がある割安株の数十銘柄に100株ずつ投資。だが、12年までは思うように結果が出ず、塩漬け株も多かった。

転機となったのは13年。アベノミクスを受けて日本株相場が上昇したタイミングだ。保有株の含み益もプラスに転じたが、上昇率は低く、「業績が上がらないと株価は大きく上昇しない」(イタルさん)と実感した。粗利益や売上高営業利益率が緩やかでも上昇傾向で、PER(株価収益率)などのバリュエーション(投資尺度)が割安な銘柄に投資するスタイルに変更した。

流動性は気にせず、時価総額50億円未満の銘柄も購入

イタルさんが銘柄選定の際に基準とするのは、時価総額が500億円以下であること。一般に、時価総額が小さいほど機関投資家の売買対象となりにくいとされているからだ。個人投資家の取引が中心となっている銘柄は大口の資金が入りづらく、割安な水準で放置されている銘柄が多い。そのため流動性は気にせず、時価総額が50億円未満の株を購入するケースもあるという。

また、通期の業績や来期の業績予想が会社予想や『会社四季報』の予想を上回るとみられる場合や、悪材料が出ていないのにもかかわらず、相場の地合いによって株価が大きく下がった場合も要チェックだという。こうして自身で決めた「買い条件」に複数合致する銘柄を購入対象としている。

長期保有できそうな銘柄を選別した後は、決算内容が期待外れだったり、今後の企業業績が厳しくなるとみられたりするなど、1つ以上の「売り条件」に合致しない限り、2~3年間保有することが多い。現在の保有銘柄数は30程度で、1銘柄のウエートが、金融資産の10%を超えないように分散投資を徹底している。

これまでの成功例の一つは、19年12月に上場した不動産サイト運営のランディックス。上場翌月に投資勉強会を通して知った銘柄だが、当初は割安と思えず、チェック対象にとどめていた。

その後、20年3月のコロナショックで株価が大きく下げたタイミングで5000株を購入。業績成長率が高かったため割安と判断した。金融緩和相場も追い風に株価が上昇し、利益を得ることに成功。以後も下のグラフのように売買を繰り返し、現在も主力株の一角として保有している。

現在の注目銘柄の一つは、自動車リースのシステム業務支援事業などを手掛けるシステム・ロケーションだ。

「ニッチな分野に強みがある企業。業績は増収増益基調で、売上高営業利益率は約40%と高い。23年3月期も30%近い増益を見込んでいるものの、PERは13倍台で割安にみえる」(イタルさん)

また、カメラや時計などの買い取り・販売を手掛けるシュッピンにも注目。同社は中古カメラのEC(電子商取引)市場でトップシェアを誇る。「安定した増益基調が続くとみられるため、株価がもう少し割安になったタイミングで購入したい」

気になる400~500銘柄の決算を全てチェック

平日は会社員として働くイタルさんは、本やブログを読んだり、週末に投資勉強会に参加したりして情報を入手しながら、仕事と投資を両立している。『会社四季報』は必ず購入し、気になる400~500銘柄はエクセルのリストにまとめ、決算発表は全てチェックしているという。

「短期で大きく儲けるのは確かに魅力的だ。しかし、短期であればあるほどギャンブル性が高く、ゼロサムゲームに近づく」と話すイタルさん。

短期投資で稼ぐ一握りの投資家の手法をまねするより、「中長期目線で投資先の成長の果実を享受する方がベター」。余暇を企業分析に充て有望銘柄を探してきた。その成果が資産拡大に表れている。 

(井沢ひとみ)