東京ドーム、ホテルに滞在型アパート 3年で200億円投資

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今後2~3年で200億円程度を投じてホテル客室の一部を長期滞在型サービス付きアパートメントに切り替えるほか、エンターテインメント施設などを導入する方向で検討する。インバウンド(訪日外国人観光客)需要の回復もにらみ、国内外の観光客の集客につなげる。

 

北原義一会長兼最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞の取材で明らかにした。東京ドームは三井不動産が2021年に約1200億円を投じて買収した。現在は40年代の完成を目指して周辺エリアの大規模開発に動いており、6月に開発計画の策定に着手した。北原氏は「約1年をかけて大きな絵姿を決める」と述べた。買収後に具体的な再開発計画が明らかになるのは初めて。

 

まず今後2~3年はアジアを中心とした観光客の回復をにらみ、既存施設の改装投資を優先する。東京ドームに隣接する「東京ドームホテル」は客室を改装し、一部をサービス付きアパートメントにする方向で検討する。ドーム周辺の空いた場所に物販や飲食店、エンタメ施設を設けるほか、隣接する温浴施設「スパ ラクーア」が入る複合ビルは店舗構成を見直し、集客力の向上を目指す。

ドーム内は約100億円を投じて既に改装した。従来の4倍超の面積の大型ビジョンを設け、グループ席を400席設けるなど観客席も拡充したほか、顔認証技術システムによる入場や決済も導入した。ドーム内の物販は完全にキャッシュレスで対応している。今後はこうした取り組みを発展させ、周辺エリアで利用できる地域通貨の流通も模索する。

今後2~3年の投資額について、北原氏は「ドーム内の改装を含め、現時点で300億円規模を想定している」と話した。これは前期までの過去3年間の数億円に比べて大規模投資となる。北原氏はまた「メタバース(仮想空間)上で(音楽などを)楽しめるビジネスも検討し、国内やアジアを対象にして新たな収益源を生み出す」と話した。

ドームは将来的には建て替えを予定するが、北原氏は建て替え期間中の球場について「エリア内で先に造った施設で続けるか、他の場所で代替するかが選択肢」と話した。今後は後楽園ホールビルなど老朽化した施設の建て替えも課題となる。

東京ドームは新型コロナウイルス感染拡大前は年間4千万人が訪れていたが、近年は施設の老朽化が進み、都内の他の再開発エリアとの集客競争が激しくなっている。イベントの開催中止で減少した来場者は足元でコロナ前の7~8割に戻ったものの、コロナ前の観光消費を支えた訪日客の本格的な受け入れ再開には時間がかかる。

ドームはプロ野球で高い集客力をもつほか、コンサートやアニメイベントなど、外国人に人気のイベントも多く開催している。今後は競争力のあるコンテンツを持つ企業と共同出資会社をつくったり、協業したりすることも検討する。