社会保障への不安を解消する改革案を

社会保障制度に対する国民の不安は根強いのに、参院選での論戦は低調だ。

今回の当選者は任期中に2025年を迎える。「団塊の世代」の全員が75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護ニーズが増大していく節目の年である。

高齢者を支える20~64歳の人口は25年から40年にかけて1千万人超も減少する。現役世代が高齢者を支える仕送り型の社会保障が限界に近づくのは明らかだ。

25年をどう迎え、40年にどう備えるか。これは今後6年の任期を与えられる参院議員にとって最重要テーマの一つのはずだ。ところが各党の公約は給付の充実策が前面に出る一方、制度の持続性を高める改革案は乏しい。

医療・介護は年齢ではなく能力に基づいた負担の仕組みを追求することが課題だ。だが自民党の公約は「世代間の公平性や制度の持続性の観点から負担のあり方を検討する」と具体策に欠く。

年金は将来の給付水準が著しく下がるのを防ぐ目的で行った04年の制度改革が機能していない。少子高齢化の進展に合わせて足元の年金額を抑えるマクロ経済スライドを導入したが、発動要件が厳しいので抑制が進んでいない。

22年度の基礎年金額は月額6万4816円だが、こうした年金財政の悪化が反映され、46年以降は19年時点の賃金水準に換算して約4.7万円まで目減りする。現状を放置すると、老後に困窮する人が続出しかねない。

各党は厚生年金の適用範囲を拡大して、パートタイム労働者らが報酬比例年金を得られるようにする方針を掲げているが、自営業者らは対象外なので低年金問題の決め手にはならない。

立憲民主党や国民民主党は最低保障機能を強化した年金制度の検討を掲げている。だが財源や給付水準など具体像は示していない。日本維新の会などが掲げる、減税と現金給付を組み合わせる給付付き税額控除も同様だ。

高齢化で膨らむ社会保障の安定財源を確保するために、消費税率引き上げの議論からも逃げるべきではない。特に物価高対策として消費税率の引き下げを訴える野党は、社会保障の財源をどうするのかきちんと説明してほしい。