https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62107310Y2A620C2MM8000/
海外発の金利上昇圧力を受け、長期金利を抑え込むための日銀の国債購入(総合2面きょうのことば)が急増したためだ。中央銀行が発行済みの国債の過半を買い占める異常事態となっている。金利の逆転などゆがみは深まり、市場本来の機能が働きにくい。日銀の政策が歴史的な円安を誘い、それが物価高を呼ぶ矛盾にも直面、緩和長期化の副作用が広がりつつある。
日銀は長期金利の上限を0.25%程度に抑える方針で国債を無制限に買い入れている。米欧の長期金利上昇で日本でも金利に上昇圧力がかかり、日銀は金利を抑えるため大量の国債買いを余儀なくされている。6月の購入額はすでに14.8兆円と2014年11月の11.1兆円を抜いて最大となった。月末には15.9兆円に達する見通しだ。
QUICKの6月27日時点のデータによると、短期国債を除く国債の発行残高は1021.1兆円、日銀の保有額は514.9兆円(20日時点、額面べース)。日銀の保有割合は50.4%と21年2~3月の50.0%を超えて最大となった。黒田東彦総裁が大規模緩和を開始した13年の保有割合は1割台だった。
6月には日銀が上限とする0.25%を超える利回りでの取引も発生した。日銀が買うと約束しているよりも安い価格で国債が売買されている状態だ。これは日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)と呼ばれる現在の金利抑制策を早晩維持できなくなると、市場参加者が予想していることを意味する。
日本と米欧の金利差の拡大で円安が進みやすくなっている。円相場は6月に一時、24年ぶりの安値となる1ドル=136円台まで下落した。円安は資源高も重なって物価を押し上げている。
民間金融機関による国債保有は減少している。3月末時点で銀行などの預金取扱機関の保有比率は11.4%、保険・年金基金は23.2%だ。長期金利が上昇(国債価格が下落)して損失が発生するリスクを、日銀が一手に引き受けている構図ともいえる。
日銀が国債の半分を保有する状況は財政規律を緩ませ、中央銀行による財政赤字の穴埋めとも受け取られかねない。政府は日銀依存から抜け出すため、経済成長を促す改革に正面から取り組む必要がある。企業も金融緩和に頼らずに収益力を高めることが求められる。


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