https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC212NF0R20C22A6000000
故・黒川紀章氏(1934~2007年)が設計を手掛けた「メタボリズム(新陳代謝)建築」を代表する建物だ。日経クロステックは施工会社の協力を得て内部に入った。
大部分を防音パネルが覆う中銀カプセルタワービルの解体現場。時折隣接するヤードからクレーンがアームを伸ばし、丸窓を備えたカプセルをビルの上へと引っ張り上げる。
建物は11階建てと13階建ての2棟が立ち並び、タワーの中心部から周りに合計140個のカプセルユニットを取り付けた構造だ。カプセルを入れ替えることで新陳代謝を図る建築思想だったが、入れ替えは一度も実現しなかった。解体工事では、そのカプセルを上から順に、1つずつ取り外している。
建物の解体を巡っては、21年にビルの管理組合が敷地の売却を決定。住人の退去が完了し、解体作業が始まった。
日経クロステックは工事を受注した東京ビルド(東京都立川市)の協力を得て内部に入った。同社統括本部の庄下雅人取締役統括部長は「他にはない特殊な現場だ。解体を請け負った施工会社として、安全に配慮しながら進めていく」と意気込みを語る。
現場の様子からは、様々な制約の中で施工面の工夫が見て取れた。
カプセルの外壁の室内側などにアスベストが使用されていたため、事前の除去作業が必要だった。一定の区画ごとに内部を養生して集じん機を設置。カプセルの内壁を撤去してアスベストの除去を進めた。
カプセル本体の扱いにも工夫が求められた。140個のうち25個は、美術館などで後日展示するなど活用を検討していたため保存する必要があった。空き地に建物を倒すといった手法は使えない。解体に使う重機を置くスペースや、足場を組み立てる際の固定場所が限られた。
カプセルの状態はまちまちだ。東京ビルド計画管制課の荒川仁吾課長は「床板を剥がしたら、外壁が取れていたカプセルもあった。骨組みの上に乗って作業を進めるようにしている」と語る。一部では植物が生えている場所もあったという。
カプセル1個当たりの重さは約3トン。老朽化の程度を確認しながら、慎重に取り外さなければならなかった。解体工事の工期は、22年12月までを予定している。






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