届かぬグリーンマネー、東証インフラ市場で初の上場廃止

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB242PG0U2A620C2000000

 

全7銘柄合計の時価総額は約1800億円にとどまり、中堅の日本再生可能エネルギーインフラ投資法人はTOB(株式公開買い付け)の結果、初の上場廃止となる見通しだ。太陽光発電所を投資対象とするためESG(環境・社会・企業統治)マネーの流入が期待されていたが、実際には不便な点が多く、好機を捉えきれずにいる。

 

上場廃止で市場規模は1割縮小

日本再生エネの上場廃止はインフラファンド市場の退潮ぶりを示す出来事といえる。同市場に最初の銘柄が上場したのは16年6月。当初は年1~2銘柄が新規上場していたが、20年2月を最後に止まり、時価総額もここ1年は1600億~1800億円で横ばいとなっていた。時価総額が約230億円の日本再生エネの上場廃止により、インフラファンド市場の規模は1割強縮小することになる。

誤算だったのはESG投資の活発化で機関投資家などの買い手が増え、発電所の取引相場が上場インフラファンドの相場を上回るペースで上昇したことだ。足元の上場インフラファンドの分配金利回りが平均で6%程度なのに対し、機関投資家の発電所の投資利回りの目安は3~5%。利回りが低い分、高値で取引されることになる。

発電事業者からすれば、他が高値で買ってくれるのであれば、わざわざ系列のファンドに売る必要はない。一方のファンドも発電所を高値で購入すれば、1口あたりの分配金が減って投資家の不利益になりかねない。実際にRJは日本再生エネの非公開化の理由として、RJが発電所を売ろうとしても日本再生エネが購入できないケースが続いていたことを挙げた。

機関投資家、購入しにくく

インフラファンドに資金が流れ込まないのは、小粒銘柄が多く、機関投資家が購入しにくいためだ。各銘柄の個人投資家の比率は5~7割。時価総額が最も大きいカナディアンですら、1日の売買代金が1億円に満たない日が多い。ある信用金庫の運用担当者は「インフラファンドは公募増資の時くらいしか買えないうえ、最近は魅力的な増資も減っている」と話す。

インフラファンドを巡る制度への懸念も大きい。インフラファンドは一定の条件を満たすと、ファンドにかかる法人税が実質非課税になるルールがある。「導管性要件」と呼ぶこのルールは不動産投資信託(REIT)にもあり、ともにこのルールのおかげで上場株や債券に比べて高い利回りを実現している。もっとも、REITは適用期間の制限がないのに対し、インフラファンドは上場から約20年に限定され、将来は分配金が大幅に減るリスクがある。

インフラファンド業界側は当局に導管性要件の恒久化や、適用条件の緩和を要請しており、今後制度が変わる可能性はある。もっとも、市場からは「時限的な金融商品であり、安心して投資できない」(地方銀行)との声も聞かれる。

「インフラファンド市場はまだ生みの苦しみの段階だ」と東京証券取引所の担当者は話す。01年に最初の銘柄が上場し、現在約16兆円のREIT市場も、時価総額が1兆円を超えてから投資家層が広がったという。

21年に政府は30年度の電源構成計画のうち、再生エネの割合を「36~38%」と従来の「22~24%」から大幅に引き上げた。再生エネ需要の拡大により、インフラファンドへの追い風が強まっているのは確かだ。制度変更も含めて投資しやすい市場を確立できなければ、将来の存続も危ぶまれる。