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総務省が24日発表した5月の物価上昇率は前年同月比2.5%だった。資源高などで2カ月連続で2%を超えた。内訳を分析すると、よく買うものほど価格高騰が鮮明だ。ガソリンや食品など月1回以上は買う品目は上昇率が5.0%と全体の倍に達する。物価高は統計の見た目以上に家計の重荷となっている可能性がある。
物価上昇率は4月に全体で2.5%、変動の激しい生鮮食品を除いて2.1%といずれも7年1カ月ぶりに2%台に乗った。ウクライナ危機下のエネルギー価格の高騰に加え、携帯値下げの影響が一巡したのが大きかった。同じ幅の伸びが5月も続いた。
国内の物価上昇は全体としては米国(8.6%)や英国(9.1%)などに比べればまだ鈍い。内実はまだら模様といえる。
足元では消費者がよく買うものほど値上がりが目立つ。物価算定のもとになる計582品目のうち、購入回数が平均年15回以上と「頻繁」な食パンやガソリンなど44品目のインフレ率は2021年秋に4%を突破した。22年3~4月は5%を超え、5月も4.9%と高水準が続いた。日常の買い物で直面する物価高が物価全体の表向きの数字以上に重いことを示す。
頻繁に買うのは生鮮食品も多い。5月にタマネギは2.25倍になり、キャベツは40.6%上がった。産地での天候不順のほか、輸送費の高騰などが響いている。
買うのが1カ月に1回程度のものも急騰し、5.1%上がった。食品各社が相次ぎ値上げに踏み切った食用油(36.2%上昇)、電気代(18.6%上昇)などを含む。生活に欠かせないため値段が上がっても買わずに済ませるのが難しく、インフレが進みやすいとみられる。
これらの「よく買うもの」は物価全体を押し上げる寄与度も大きい。ガソリン、電気代などエネルギー関連は1.26ポイント分、食料は1.06ポイント分のインフレ要因となった。
裏腹に、あまり買わないものほどインフレ率は低い傾向がある。ロールケーキや殺虫剤など購入が半年に1回程度の品目は2.3%で全体と同水準だ。ソファ、パソコンなど買うのが年0.5回未満と「まれ」な品目は1.7%にとどまった。
日本経済は米欧に比べて回復が遅く、国内総生産(GDP)は1~3月期時点で新型コロナウイルス禍以前の水準に届いていない。潜在的な供給力に対して需要が足りない状態も解消していない。
現状のインフレはエネルギーや食料など海外発のコスト高や円安による部分が大きい。企業収益の拡大や賃上げが物価を安定的に押し上げる望ましいかたちにはなっていない。資源高による海外への所得流出で日本の購買力が全体として低下する構図も定着しつつある。
大和総研の瀬戸佑基氏は「家計が実感するインフレ率はかなり高い状況が当面続き、物価上昇が消費マインドなどに及ぼす悪影響は注意が必要だ」と指摘する。


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