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制度が変わり、短時間勤務の非正規雇用者が加入する条件が緩和されるためです。具体的な条件やメリットを確認しておきましょう。
Q 厚生年金とは、どのような制度ですか。
A 主に会社員や公務員が加入する公的年金です。日本の年金制度は3階建てといわれます。1階部分が20歳以上60歳未満の全ての国民が加入する国民年金(基礎年金)で、2階部分が厚生年金、3階が企業年金などの私的年金です。厚生年金に加入する会社員などは毎月、給与の中から保険料を払っています。リタイア後には終身で年金を受け取れます。
Q 保険料はいくらくらいですか。
A 基本的には給与や賞与に応じた金額を納めます。収入(標準報酬月額)で決められた金額のうち、半分を本人が、残りの半分を勤め先が払う仕組みです。例えば標準報酬月額が22万円なら本人負担の約2万円が毎月の給与から天引きされます。天引きされる保険料の中には基礎年金の分も含まれています。収入が多い人は保険料が高く、将来受け取る年金額も多くなります。
Q 厚生年金の対象者が広がるのですか。
A 厚生年金は基本的にはフルタイムで働いている人を対象としていました。それをパートやアルバイトといった短時間労働者にも広げる制度改革が進められています。現在、短時間労働者が厚生年金に加入する条件は労働時間が週20時間以上で月額賃金は8万8000円(年収換算で約106万円)以上。さらに勤務先の従業員数や勤務する期間の条件があります。今後は勤務先や期間の条件が引き下げられます。
Q 具体的にはどのような人が対象になるのですか。
A 現在、厚生年金の対象になるのは従業員数が500人超の勤務先で働く人で、雇用期間が1年以上見込まれる人です。それを今年10月からは雇用期間を2カ月超の見込みとし、勤務先も従業員数100人超とします。24年10月から従業員数の基準は50人超とします。ただし学生は条件を満たしても対象外です。従業員規模の緩和により厚生年金の加入者は約65万人増える見通しです。
Q 保険料を払うと、手取りが減ってしまうのでは。
A 手取りが減るケースはありますが、長い目では損とは言えません。年収106万円の場合でみてみましょう。保険料負担のないパート主婦(第3号被保険者)が厚生年金の対象になると、保険料の自己負担は月約8000円です。しかし、20年間加入すると公的年金の受給額が月約9000円増えることになります。平均余命で考えれば保険料より年金が多くなる計算です。もちろん、労働時間を抑えるなどして厚生年金の加入を避ける選択もできます。
Q メリットを感じるまで時間がかかりそうですね。
A 年金の上乗せ効果は老後だけではありません。障害を負ったときには障害厚生年金、亡くなったときには遺族厚生年金の対象にもなります。障害厚生年金は、障害基礎年金よりも軽度な障害で給付を受けられるケースがあります。「一般的には年金額が増える分、加入するほうがメリットがある」と社会保険労務士の佐藤麻衣子氏は解説します。
Q ほかにメリットはありますか。
A 厚生年金に加入した人は、勤め先の公的な医療保険(健康保険)に入ります。それまで国民健康保険などに個人で加入していた人は「通常は病気などへの備えが手厚くなる」と社労士の佐藤氏は指摘します。例えば、病気やけがで仕事を休んだときに4日目から受け取れる傷病手当金、産休中に受給できる出産手当金といった給付は国民健康保険にはありません。

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