利上げ速度柔軟に、景気後退は「可能性」 FRB議長証言

冒頭発言では今後の利上げペースについて「(物価などの)データに機敏に反応していく」とした。景気後退を呼び込む懸念について「可能性はある」と認めつつ、足元の米経済は強いという認識を示して積極的な利上げを続ける姿勢を示した。

FRBは14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、約27年ぶりとなる0.75%の利上げを決めた。7月まで0.5%の利上げ幅を続けると強く示唆していたが、直前に公表された5月の消費者物価指数(CPI)などが予想を上回って方針を転換した経緯がある。パウエル氏は「我々の考え方を可能な限り明確に示しながら、会合ごとに決定を下していく」と強調した。

質疑では急速な利上げが景気後退を呼び込む懸念について聞かれ「確かに可能性はある」と認めた。「率直にいえば、労働市場を健全に保ったまま物価安定を目指すという我々の望みは、この数カ月間でより難しくなっている」と話した。インフレをけん引するガソリンや食品の価格に金融政策の効果が及びにくい点も改めて説明した。

議員からは住宅ローン金利の上昇が「住宅危機を招く」と批判も出たが、パウエル氏は新型コロナウイルス禍で住宅市場が過熱していたと反論。「かなり早い段階で、住宅価格の上昇ペースはゆるやかになる」と見通した。

冒頭発言ではインフレが想定を上回った理由を「供給制約が予想以上に広く、長く続いてきた」と分析した。ロシアによるウクライナ侵攻が原油価格をさらに押し上げ、新型コロナの感染を徹底的に封じ込める中国の「ゼロコロナ政策」も供給制約を悪化させたと指摘した。

一方で米国経済そのものは強いという認識を繰り返した。企業の設備投資や住宅で減速がみられるものの「個人消費は強い状態を保っている」として、実質経済成長率は4~6月期に持ち直すとの見通しを示した。1~3月期はマイナス成長となったが、在庫の動きや貿易赤字が主因で需要は強かったとも言及した。労働参加率がさほど改善せず人手不足が続いている点にも触れた。

FRBは年2回、米議会に金融政策報告書(通称ハンフリー・ホーキンス報告書)を提出し、議会に政策判断を説明する。今回の報告書は「特に生活必需品の値上がりが人々に大きな苦難を強いることを痛感している」などとして積極的な利上げの継続を示唆する内容だった。パウエル議長は23日には下院で証言する。