昭和を引きずる指導層への警句 白書にみる移ろう家族像

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD211B70R20C22A6000000

 

要は、男性よりも軽くみられがちな女性の権利を高めるのを政策目標にしてきた。だからといってこの問題を取材するのは男性よりも女性が適しているということにはなるまい。歴代の参画局長も女性官僚が就くのが常態化している。その点で、行政府もメディアも見事にアンコンシャス・バイアスにとらわれている。

 

令和の50~60代独身女性のおよそ半数は離婚経験をもっている。また「将来、離婚する可能性がある」と思っている人が男女ともに全体の15%程度いる。女性にとって結婚が「永久就職」に擬せられた昭和は遠くなりにけり、である。

若者に目を転ずると、令和の20代女性の約5割、男性の約7割に配偶者や恋人がいない。20代の独身者のうち中学を出てからこれまで誰ともデートしたことがない女性は25%、男性にいたっては40%いた。これらは内閣府が独自に実施した2万人調査の結果だ。

共働き世帯数が専業主婦の世帯数を逆転したのは1990年代前半だ。昭和60年(1985年)と令和2年(2020年)をくらべると、この間に共働き世帯は71%増え、専業主婦世帯は40%減った。社会保障・税制を立案するベースとなる家族のかたちが絶え間なく変化しているのが読み取れる。

「夫が正社員・妻は専業主婦かパート主婦」などの夫婦世帯には、妻が保険料を払わずに国民年金をもらえる特典がある。内助の功を重くみて創設された年金の第3号被保険者制度だ。この適用人数は昭和60年の1093万人から令和2年に793万人に減った。仮に、国民年金の財源を全額消費税に置き換えれば、独身女性などが抱く不公平感は解消される。白書が政府・与党の政治指導者に昭和への未練を断ち、年金改革の断行を迫っているようにもみえる。

岸田政権が今月決定した「女性版骨太の方針2022」は、家庭や地域社会での男性の孤立にも焦点をあてている。日本総合研究所の岡元真希子副主任研究員は、女性との比較で愚痴を打ち明けられる人間関係を築いている人が少ない実態に着目する。男女共同参画が女性だけの問題ではない現実を物語るデータだ。執筆陣がアンコンシャス・バイアスにとらわれないよう腐心した跡がうかがえる今年の白書は、とくに昭和世代にとって一読の価値がある。