https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61905690R20C22A6FFT000/
企業の顧客データの安全な活用を後押しするスタートアップの取り組みが相次いでいる。デジタル化支援のLayerX(レイヤーX、東京・中央)はデータに乱数を加えて個人情報の特定を防ぐ事業を始める。個人の収入や健康に関わるデータは流出を避けるため、埋蔵されたままのケースも多い。新興勢の技術で活用できれば新たな事業やサービスにつながる。
レイヤーXは企業の顧客データのうち年収や性別ごとの人数の内訳、購買履歴といった数値に関わる部分に乱数を加えて正しい情報を秘匿する。ハッカーに個々のデータを奪われても意味をなさない内容に加工する。一方で正規の相手が使うと、加工前の数値と大きな誤差のない分析結果を得られるようにする。
これは「差分プライバシー」と呼ばれる技術だ。ハッカーが複数のデータを組み合わせて個人情報を特定する「リンケージ攻撃」などに有効とされ、米国の国勢調査やアップルの一部サービスでも活用されている。
レイヤーXは約1年前に開発を開始。アプリ運営などを手掛けるGunosy出身で、東京工業大と情報セキュリティー技術を共同研究した経験を持つ中村龍矢執行役員が主導してきた。今年1月から金融機関など3社と実証実験し、個人情報を守りながら正確な分析結果を得られたことで実用化を決めた。
病院が患者の健康データを製薬企業に提供して創薬につなげたり、カード会社が持つ顧客の購買履歴をメーカーのマーケティングに役立てたりする使い方を想定する。データの有効活用を促し、2025年までに顧客企業の売上高で累計100億円を目指す。

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