[FT・Lex]暗号資産暴落、打撃はマイノリティーと若者に

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欧州出身の先祖を持ち、若く高学歴で、将来は高い収入が見込める男性が暗号資産(仮想通貨)に投資するというステレオタイプ化された見方だ。ところが実際には、米国の投資家に占めるアフリカ系やヒスパニック系米国人の比率は人口に不釣り合いなほど高くなっている。

 

2021年11月以来、仮想通貨の市場価値は3分の2にあたる2兆ドル(約270兆円)以上減少し、1兆ドルを割り込んだ。ビットコインはその価値の7割を失い、2万ドル強で取引されている。

デジタル資産の暴落は、マイノリティー(少数派)人種の投資家を直撃するだろう。米ピュー・リサーチ・センターの21年の報告書によると、アジア系、黒人、ヒスパニック系の成人は、白人よりも仮想通貨を購入する傾向がある。

米アリエル・インベストメンツと米ネット証券チャールズ・シュワブが行った別の調査によると、世帯収入5万ドル以上の米国の黒人の25%が仮想通貨を保有している。これに対し、収入が同じくらいの白人は15%だった。また、最初の投資先が仮想通貨だったと答えた黒人投資家は11%で、白人の4%の2倍以上だった。

米調査会社インサイダー・インテリジェンスによると、すべての人種・民族において、仮想通貨を購入するのは25~34歳の年齢層が圧倒的に多い。若者とマイノリティーが主要な仮想通貨の買い手なのは、所得と個人資産が少ないためかもしれない。ニューヨークやサンフランシスコのような物価の高い都市では、収入の少ない人は住宅投資に手が届かない。そうした人の一部にとって、仮想通貨は手ごろな選択肢に見えたのかもしれない。

仮想通貨バブルが膨らんだのは、低金利の資金が市場にあふれていたからだ。だが、住宅や大学教育といった資産の価格が賃金よりも急ピッチで上昇したことが、それほど目立たない形で原動力となったのかもしれない。カリフォルニア州選出のシャーマン下院議員は、「我々に必要なのは、人々が貯蓄をするのに十分な所得を得て、コインではなく住宅を買えるような社会だ」と語る。