投資は資産配分で8割決まる

インフレが世界的な関心事だ。パンデミックによるデフレ圧力を緩和するため、政策を総動員した時とは状況が一変し、経済再開による旺盛な需要の立ち上がりがインフレショックとなっている。ロシアのウクライナ侵攻が食料・エネルギーの供給不足をもたらし、問題を一段と複雑にしている。労働人口減少と経済の枠組み転換は、労働力や財の供給不足を恒常化させ、インフレと景気サイクルが金融市場を翻弄するだろう。

岸田文雄首相は「資産所得倍増プラン」を打ち出した。しかし日本では企業利益は過去最高だが給与は低迷し、個人金融資産はほぼ現金である。所得や資産が倍増するには、経営者はじめ日本人全体に大胆な転換が求められる。

長期投資でリターンを決定する要因は、投資タイミングや銘柄選択の影響はかなり小さく、8割以上がアセットアロケーション(運用資産の配分比率)と言われる。しかし目にする投資助言の大半は「買い時、売り時」「注目銘柄」で、資産配分に関するものは乏しい。これでは資産が長期的に増加した成功体験を持つ日本人は増えていかない。

アセットアロケーションで失敗しないポイントは、適切な目標設定と運用管理プロセスの構築だ。長期投資では複数の景気サイクルを捉えた時間軸で考える必要があり、長期的な資産配分のベンチマークから大きく乖離(かいり)させることはない。つまりベンチマーク対比で、市場が下落し資産比率が低下した時は、減少分を補う形で追加投資を行う。上昇局面で買い、下落時に売ることとは反対のアクションが必要となる。

金融政策の正常化は、リスクマネーの供給が細ることを意味する。期待先行で買われていた資産や、資産価値の計測が困難な資産には、短期的に大きな売り圧力がかかるだろう。同時に、しっかりとしたキャッシュフローを生み出す実績のある優良資産が巻き添えで売られるなら、割安な価格で手に入れるチャンスでもある。アロケーション比率の低下が、優良資産への追加投資のチャンスになる。

アセットアロケーション戦略では、短期的モメンタム(勢い)に追随するトレーディングとは違う視点で判断を検討しなくてはならない。資産倍増を目指すには、このような視点でのアドバイスがより必要となる。