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首都圏マンションの将来価値 「長く住めるか」見極め

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD249JD0U2A520C2000000

 

新型コロナウイルスの感染拡大により供給戸数が減少し、価格はバブル期をしのぐ水準にまで上昇している。見えてきた高騰下の人気物件の共通項は「売らずに住み続けられるマンション」だ。

 

「ザ・パークハウス グラン」――。三菱地所レジデンスの宮島正治社長が「あまりマーケット(市場)に出てこないが、これぞ当社の理想型」と言うマンションブランドだ。パークハウスシリーズの一つだが、供給戸数は累計で8棟、戸数で608戸と小規模だ。

三菱地所レジデンスのマンション事業は「ザ・パークハウス」ブランドを3シリーズに分けて販売しており、中でも「グラン」を冠するマンションは年間に1棟あるかどうかだ。2021年に全国で2214戸を販売した同社だが、立地やデザインなど社内で審査し、流通量を絞り込んでいる。「なかなか売り物が出てこず、出てきても値上がりしているケースも多い」(宮島社長)ため、新築も強気の値段設定だ。

不動産経済研究所(東京・新宿)によると、2021年の首都圏の新築マンションの平均価格は6260万円。バブル期(1990年)の6123万円を上回った。価格が高くなればなるほどマンション選びは失敗できず、消費者は将来の資産価値を慎重に見定めている。

リクルートの「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、購入理由では「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」との回答が29.1%と03年以降で最高だった。

モデルルームに訪問する消費者の行動も変化し始めた。住友不動産が東京都江東区の湾岸エリアで手がける3棟建てのタワーマンション「シティタワーズ東京ベイ」は2017年8月から販売を始めた。「コロナ禍以降、モデルルームへの来場者数は1割以上減った」(吉野秀邦・首都圏南第二営業所長)ものの、来場者が購入を決める契約率は高い。コロナ禍前に比べると5ポイント近く上昇した月もあるという。

「オンライン案内会なども活用しながら緻密に情報を収集してから来場する。相当研究している場合が多く、資産性も納得のいく水準かをよく考えている」(吉野所長)

今回の調査でも長い目でみて資産価値が劣化しにくいと見込まれる物件が高い評価を得た。例えば、野村不動産の「プラウドタワー小岩ファースト」。坪(3.3平方メートル)単価は300万円台と都心に比べると比較的安く、駅への利便性が支持を集めた。契約の5割超は20~30歳代だ。

購入後も長期間住み続けられるかもポイントの一つだ。同物件はJR小岩駅の南側で進む巨大プロジェクトの一画で、他のプロジェクトも立ち上がってくる見通しだ。江戸川区も「100年栄えるまちづくり」として開発全体をサポートしている。

三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス 板橋大山大楠ノ杜」(東京・板橋)も同じ理由から人気を集めた。

21年12月から売り出し、当初は23年3月末までに売り切る予定だったが、売れ行き好調で終売時期を2度前倒し、「今年10月には完売する予定」(販売担当の伊藤一樹さん)という。購入予定者は共働きで世帯収入が高い「パワーカップル」を含めた30歳代が50%程度を占める。その多くが「住み続けることを前提にしている」(同)。周辺エリアで板橋区などが大型再開発を進めており、周辺の環境整備が進んでいる、資産価値の向上を期待して購入に踏み切る人が多かった。

ただ、新築マンション価格の上昇スピードのあまりの早さから、このまま引き合いが強まるか疑問視する声も出ている。

販売価格がバブル期を超えでもマンション市場が好調だったのはパワーカップルがけん引してきたためだ。東急不動産の販売担当者は「今でも1億5000万円くらいまでならパワーカップルはついてきてくれる」とみている。

しかし、円安の影響もあり建築資材が高騰し、販売価格はさらに上昇する可能性が高い。食品や燃料などの価格上昇で家計も厳しさを増す中、旺盛な購入意欲が継続するかは不透明な面もある。