https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB174IY0X10C22A6000000
景気回復はまだ道半ばで、緩和縮小は時期尚早とみているためだ。ただ、世界の主要中銀は一斉に利上げに動いており、緩和維持には円安圧力を強めかねない危うさがある。日銀は声明文で為替市場を「注視」すると明記したが、金融緩和のコストも無視できなくなっている。
黒田東彦総裁は17日の記者会見で「日本経済が回復途上にあるなかでしっかりと支えていく」と語った。日銀は長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0.1%に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)をこれまで通り継続すると決定。年12兆円を上限に、必要に応じて上場投資信託(ETF)を買い入れる措置も維持する。
緩和継続のコストは着実に高まっている。日銀はこの1週間だけで10年債3銘柄を6.7兆円分購入した。これは市場に出回る同銘柄の債券(14兆円)の半分近くに相当する。日本経済研究センターは、日銀が長期金利を0.25%に抑え続けようとすれば、国債の保有残高を現在の500兆円強から120兆円増やす必要があると試算する。
日銀が長期金利を抑えれば抑えるほど、米欧との金利差が広がって円安圧力が強まる問題もある。黒田総裁は会見で「急激な円安は経済にマイナス」と語ったが、緩和継続の姿勢との矛盾は否めない。
円相場は今週、1ドル=135円台半ばと24年ぶりの安値を付けた。円安は輸入物価の上昇を通じて物価を押し上げ、企業や家計の負担感を高める。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは仮に140円台半ばの円安が続けば、物価上昇率は一時的に3%程度まで上昇するとの試算をまとめた。
日銀は緩和継続のメリットとコストを勘案して政策を決めているが、そのバランスは大規模緩和が長引くにつれて微妙になりつつある。日銀が未来永劫(えいごう)緩和を続けられるわけではないこともまた明らかだ。


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