外食40社、コロナ補助金4.4倍 昨年度1900億円 収益を下支え、牛丼チェーン上位に

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61788670W2A610C2DTA000/

 

主要40社が2021年度に国や自治体から得た時短協力金や雇用調整助成金は前年度比4.4倍の約1900億円に膨らんだ。収益を下支えし財務の悪化回避につながった。22年度は経済再開に伴い補助金収入が大幅に減る見込みで、客足を呼び戻し売上高を回復できるかが課題となる。

 

21年度の40社の補助金合計は1895億円と20年度の431億円から急増した。東京都などの時短協力金の対象が当初は中小規模の飲食店だったが、21年から大手企業にも広がり始めた。四半期別でみると、変異型「オミクロン型」が広がった21年度第3四半期が523億円と最も多い。

上位にはゼンショーホールディングス(4倍の374億円)、吉野家ホールディングス(4倍の131億円)、松屋フーズホールディングス(7倍の100億円)など牛丼チェーンが目立つ。深夜営業が多く店舗数が多いためとみられる。

居酒屋業態では「磯丸水産」のSFPホールディングス(4倍の98億円)、チムニー(5倍の78億円)などが上位に入った。他の業態でも「丸亀製麺」のトリドールホールディングス(4倍の128億円)、「和食さと」のSRSホールディングス(4倍の73億円)など幅広く計上している。

補助金による収益の下支え効果は大きい。コロナ補助金は営業外収益や特別利益に計上される。20年度は営業損益の合計が658億円の赤字だったのに対し、最終損益は1090億円の赤字だった。補助金が急増した21年度になると、営業損益が112億円の赤字に対し、最終損益は693億円の黒字と急回復した。消費者の外出自粛や時短営業による売上高の落ち込みに加え、店舗減損などの特別損失も補助金で補った。

3月にまん延防止等重点措置が解除され、22年度は補助金収入が大幅に減る見通しだ。飲食店コンサルタントのレイ・コンサルティング(横浜市)の村岡浩昭社長は「今後、大手でも時短協力金の恩恵が切れた後の経営体力が厳しくなる企業も出てくるだろう」と指摘する。

重点措置の解除で外食需要は盛り返しているものの、本業の回復には企業間で格差が出る可能性がある。ゼンショーHDのすき家の5月の既存店売上高はコロナ前の19年同月比で14%増と好調だ。昨年冬の値上げに加え、家族連れの需要獲得をねらった店づくりが効果を生んでいる。

一方、コロワイドの5月の売上高はコロナ前比で9%減、リンガーハットやドトールコーヒーは15%前後の減少と完全回復に至っていない。原材料高や人手不足もコスト面で重荷となるなか、補助金の下支えがなくなる今期の外食業界は実力を問われることになりそうだ。