https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61785200W2A610C2ENG000/
――日銀は金融緩和政策を続ける姿勢を強調しています。
「円安がそれを難しくすると考えている。我々が日本国債を売り始めたのは、1ドル=130円を超えて円安が進み出したときだ。円安が進むと日本の物価は上昇し、政治的な問題になるはずだ」
「YCCは構造的な問題を抱えている。それはFRBなど海外の中央銀行が利上げをすればするほど、日銀は0.25%の上限を守るために国債の買い入れ、つまり金融緩和的な行動をせざるを得ないということだ。それは円安圧力となり、インフレにつながることになる」
――日銀は理論上、無制限に国債を買い入れることができます。国債価格の上昇により損失が出る可能性はないのでしょうか。
「もちろん国債価格が上がる可能性はある。そのためロスカット(損切り)の水準を決めている。私たちが日本国債の売りポジションをつくりはじめたのは、長期金利が0.21%程度の時だ。金利が0.18%よりも低下したらポジションを手じまうようにしている」
「今の世界のインフレを見ると、金利が0.18%を超えて低下する可能性はかなり低い。一方、日銀がYCCの修正に動いた時の債券価格の下落(金利の上昇)は非常に大きいものになるだろう。日銀がいったん0.25%の上限を引き上げたら、投資家はさらなる引き上げを見込んで国債を売り続ける可能性が高い。そうすると円安が進み、結局は日銀はYCCを終了せざるを得ないとみている。100%とはいえないが、75%の確率で年内にYCCを放棄するだろう。こうしたリスクとリターンを比較したときに、日本国債売りは魅力的なトレードといえる」
――急速な円安に対しては、財務省が為替介入で対応する可能性があります。
「その可能性は確かにある。しかし日銀が国債を買いながら財務省が円を買う介入をするのは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので、一貫した政策とは言えない。こうした一貫性のないものに対しては、投資家は挑戦をしたくなるものだ」
――中央銀行に投資家が挑んだ例としては、英イングランド銀行にポンド売りで挑んだ米著名投資家、ジョージ・ソロス氏のケースがあります。ソロス氏はイングランド銀を打ち負かしました。
「一部で私たちがソロス氏のようなことをしていると言われるが、それは違う。私たちは日銀を追い込もうとしているわけではなく、日銀の姿勢の変化を予想して取引をしているだけだ。もし日銀がYCCを撤廃するなら、それは日銀の勝利と言えるだろう。なぜなら彼らは2%というインフレ目標を達成できたのだから」
(聞き手は三島大地、中元大輔、佐藤俊簡)

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