https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61717790U2A610C2ENG000/
日米の金利差から円安が進み、近く日銀が金融政策を修正するとの思惑から売りが出たためだ。10年物国債利回りを0%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)下で生じたゆがみは、債券市場の機能不全につながりかねない。
償還までの残存期間が9年弱の10年債(362回債)は14日、一時0.30%台を付けた。362回債は日銀の指し値オペ(公開市場操作)の対象外で、長期金利の指標となる新発10年物国債(366回債)が13日に付けた0.255%を上回った。残存7~9年の国債利回りも0.25~0.3%程度と日銀の「上限」を突破した。
日銀は指し値オペを通じて10年債利回りを0.25%以下に抑えこもうとしている。一般的に債券の残存期間が長いほど利回りが高くなる。利回りの逆転は債券の適切な価格形成ができず、市場機能の低下を示している。投資家にとってはイールドカーブの形成を前提にした投資手法が使えなくなる懸念がある。
円相場は13日、1ドル=135円台と24年ぶりの安値を付けた。円安圧力のかかる緩和的な金融政策を日銀が変更するとの観測が海外勢を中心に高まっている。13日、黒田東彦総裁は「大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる」と発言し、市場では円安けん制のスタンスが強まったとの見方も広がった。
日銀もゆがみを気にしているフシがある。14日に実施した臨時の国債買い入れオペでは、通常対象となる10年債の直近3銘柄を買い入れ対象外とし、残存期間が5年超10年以下を対象とした。指し値オペの対象とならない10年未満の国債を大量に買い入れることでゆがみを抑えこみたい狙いがあるようだ。ただオペでは8000億円の購入枠に対して応札は8116億円と、あわや「札割れ」の状況だった。
日銀が市場で決まる長期国債の金利水準を抑え込もうとするほどいびつな利回りという形で副作用が染み出る。中期債の利回り上昇は日銀に金融政策見直しを求める「催促相場」を意味する。16~17日の金融政策決定会合に対する注目が高まる。

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