債券・株同時安、マネー逃避先乏しく 「不況下の物価高」警戒  

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB153R20V10C22A6000000

 

インフレ抑制のための利上げ加速を警戒して国債が売られ(長期金利は上昇)、利上げの悪影響で景気が悪化するとの懸念から株式も売られている。通常、債券と株式は逆の動きになることが多い。「安全資産」とされる金も売られ、不動産投資信託(REIT)も軟調だ。資金の逃避先が限られ、投資家心理は急速に冷え込んでいる。

 

株と債券の値動きは本来なら逆相関になりやすく、分散して投資することで相場急変のリスクに対応できるとされてきた。景気後退時は企業業績が悪化して株価が下がる半面、信用リスクを避けるため国債が買われ価格が上がりやすいためだ。

ところが今は逆相関の関係が成り立ちにくい。資源や半導体の不足といった供給面の制約を背景に、米国では5月の消費者物価指数(CPI)の上昇率が約40年ぶりの高水準に到達。FRBは金融引き締めを急いでいるが、インフレが落ち着く気配はまだみえず、株安につながる景気後退懸念と、債券安をもたらす利上げが併存している状況だ。

 

金利上昇は企業の利払い負担の増加にもつながる。借入金が多いREITにとっては特に逆風で、米国の指数は昨年末に比べて25%下がった。米債券市場では信用力の低い企業が発行する低格付け債にも売りが広がり、代表的な指数は同16%下げた。

 

同時安は株や債券にとどまらない。ニューヨーク市場の金先物は14日に約1カ月ぶりの安値をつけた。金は希少性や実物の裏付けから「安全資産」とされ、リスクオフ時の資金逃避先になりやすいが、米国が利上げ局面を迎えているなかで利息がつかない弱点が意識されている。株式と併せて運用する投資家が「連日の株安を受けて追い証を求められ、金を売って現金を捻出せざるを得なかった」(マーケット・ストラテジィ・インスティチュートの亀井幸一郎代表)との指摘もある。

 

市場からは「投資先は限られる。リスク資産を換金し現金にするしかない」(ピクテ投信投資顧問の松元浩氏)との声も聞かれる。