最近の企業評価ではROE(自己資本利益率)という指標が重視されている。確かにリスクをとって当社に出資してくれた株主の期待にしっかりと応えていくことは大変重要だ。しかし、単年度のROEの数値ばかりを重視することが、本来不動産会社が果たすべき役割の障害になってしまってはならない。多分株主もそんなことを望んではいないだろう。
では、不動産会社にとってROEより大切なものとは何か。それは街づくりを通して「人々の暮らしを豊かにする」「人々に感動を与える」「持続可能な社会を実現する」ということだと思う。
これらのことを実現するためには、未(いま)だキャッシュフローを生み出していない開発用土地をバランスシートにかかえこまなければならないので、ROEは低下する。特に人々に感動を与え、様々なイノベーションを生み出す都心型の開発は土地代が高いので、竣工しても物件のROEは低い。
竣工した物件を売却すればROEは上がるがそうもいかない。なぜなら我々の街づくりは建物の竣工がゴールではなくスタートだからだ。良質な「タウンマネジメント」を行うことによって、街は時を経るごとに味わいが出て価値が増す。これを我々は「経年優化」と呼んでいる。従って、建物が竣工しても、「経年優化」をさせるために手を加えていかなければならず、そのためには物件を所有し続けることになる。
我々は、「街づくりを通して豊かな社会を創る」という役割を果たすうえで「不動産会社のあるべきROEの水準」をマーケットに示していかなければならない。
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