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高校「話す英語」 どう測る 音声での採点難しく手探り 学習機会の公平性課題

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61681070T10C22A6CM0000/

 

音声の採点は簡単ではなく、過去には通塾の差が生じやすいとして試験を取りやめた地域もある。広がりには試験の適切な実施体制と学習機会の公平性が課題となりそうだ。

 

「What is the official language of France?(フランスの公用語は?)」。5月、三鷹市立第三中学校の3年の英語の授業では、生徒らが英会話を練習していた。タブレット端末で会話の様子を録画し、教員が発音や語順などを確認する。

担当の進藤大岳教諭は「テスト本番を意識し、発話の機会を多く設けている」と話す。「英語は苦手科目で不安」と語る女子生徒(14)は市販の教材CDを自宅で聞き、対策を進めているという。

東京都は11月、中学3年の約8万人を対象として英語のスピーキングテストを実施する。結果はA(20点)からF(0点)の6段階で評価。来年2月に予定される都立高入試で調査書(300満点)や学力検査(700満点)の点数に加え、合否判定に使う。

英語の学習指導要領は「聞く・読む・話す・書く」の4技能の育成を求める。ただ過去の都立高入試では話す力は問われなかった。都の担当者は「多くの生徒が一斉に試験を受けるにはデジタル端末を活用する技術が必要で、ハードルは高かった」と話す。

都立高校の生徒の英語力を巡っては2013年の抽出テストで全国平均を下回った。こうした状況を受け、都教育委員会の有識者会議が16年9月にスピーキングテストの導入を提言。都はベネッセコーポレーションと独自のスピーキングテストを開発した。

生徒は周囲の音が入りづらい耳当てをつけ、タブレット端末の問題を見ながら英語で質問に答える。都担当者は「授業でも『話す力』の養成に力が注がれるはず」と期待する。

大阪府教委は17年、話す技能も問われる「TOEFL iBT」や英検など民間試験の結果を点数換算し、従来の「聞く・読む・書く」を測る府の入試の得点と比べて高い方を合否判定に使える仕組みを導入した。英語の4技能をバランス良く評価する狙いからだ。

21年度の利用者は約2300人で、17年度(345人)の6倍超。複数回受けられる民間試験は一発勝負の入試より確実性を高めるメリットがある。文科省の調査によると、大阪府の「英検3級」以上の英語力がある中学3年の割合は17年度は39.5%で全国平均(40.7%)より低かったが、21年度は47.4%で平均(47.0%)を上回った。

一方、入試へのスピーキングテストの導入に対して教育現場には懸念もある。一つは「家庭環境による差が生じやすいのではないか」(都内の教員)という指摘だ。

岩手県は04年度に試験官と対面形式のスピーキングテストを始めたが、3年で廃止した。テスト導入を受け、対策として英会話教室に通う生徒が増加。家庭の経済状況が結果を左右する懸念が払拭できないと判断した。今のところ再開の動きはない。

独自試験の場合、実施体制や採点方法を不安視する声もある。英語研究者らでつくる団体は4月、都のテスト中止を求める約9300人分の電子署名を都教委に提出した。問題点として「8万人分の録音を短時間で公平に採点できるのか疑問」としている。

都の入試ではベネッセ関連企業のフィリピンのスタッフが複数人で生徒の音声を採点する。都は実施体制に問題がないか検証するため19~21年度に試行テストを行った。21年度は約6万4千人が参加し、目立つトラブルはなかったとしている。

外部機関の協力を得るスピーキングテストは福井県も18、19年に試行したが、他の生徒の回答が聞こえるなどの課題があり導入を見送った。県教委担当者は「東京都などの動向を見て、英語力を高める成果を得る見込みが立てば再度検討したい」と話す。